「無垢」
無垢ってただのアホじゃん
一般的にはね
裏でどうせ馬鹿にされてる
仲良くしてくるけど
目が馬鹿にしてる
言葉の節々で上から目線
わかるやつにはわかる
本当の無垢
おれはわかってるつもり
無垢の価値
潔白で純真なこと
そうじゃない
垢が着いてもものともしない
そんな意気地のこと
「優しくしないで」
俺は長友
アモーレの長友
ブラボーの長友
昔話をしよう
俺はインテルにいた
世界一のチームだ
世界一の選手がいた スナイデルだ
あいつのパスはえげつなかった
試合はおろか、
練習でもあのパスに追いつけたことはなかった
でもマイコンは追いついてる
年上のサネッティも
ある時、俺は初めてパスに追いついた
嬉しかった
スナイデルの方を見た
オランダ人の不思議な笑顔だった
二日後の試合、ベンチからスナイデルを見ていた
あいつのえげつないパス
エトーが追いついて、ゴール
その時俺は気づいた
あの日、追いついたパスは気を遣われていたんだ
スナイデルは俺に合わせてパスを緩くしたんだ
でもえげつないパスに追いつけないようじゃ
世界一のインテルに居場所はない
チームメイトがゴールに喜ぶ中、俺は独り叫んだ
「優しくしないでよ、スナイデル」
「楽園」
うわっ
満員電車だ
疑われないように手を挙げとかないと
あれつり革こんな低かったっけ?
背が伸びたのか
うわっ前の人、漫画読んでる
後ろから覗かせてもらお
これ読みきりだ うれしいなー
隣の人も覗いてる 目があった
あれ、お母さん
びっくりして屁が出ちゃうー
ふうー
ぎりぎり透かせたかな
ぷうー
くさっ お母さんの屁だ
久しぶりだ なつかしいなー
漫画も読めて、お母さんの屁も聴けて
楽園だ
あっ降りる駅に着いちゃった
降りたらすぐ学校 牢獄の入り口だ
「風に乗って」
屁が風に乗っていく
うれしいなー
我が屁よ
誰かの鼻にとんでけー
見えないなー
くさっ
帰ってきた
向かい風だ