NoName

Open App
12/27/2024, 3:09:56 PM

今年も嫌な季節がやってきた。
寒いだけの何もいいことがない冬が私を苦しめる。
冬なんて来なければいいのに。それか人間も動物みたいに冬眠出来たらいいのになんてバカなことを思いながら見慣れた街を歩く。
今日はクリスマス。周りはイルミネーションでキラキラキラキラ、腹が立つくらい輝いて街は賑やかに煌めいている。吐く息の白さにため息をつきながら家路まで早足になりながら帰る。クリスマスがワクワクしたのは何歳までだったかな。
ふと前の人が手袋を落としたのが視界に入る。どうやら本人は気づいて無いみたい。声かけた方がいいけど不審がられてもなぁ…と悩む。悩んでいる間にも落とし主は歩を進める。「はぁ、、、」と何度目かもわからないため息をついてから手袋を拾い、落とし主の元まで駆け寄る。
「あの、すみません。これ、落とされましたよ。」
落とし主は振り返り「え、あ、あれ!?あ、すみません、ありがとうございます。気づいてなかったです。……あれ?」と焦ったようにお礼をちいい手袋を受け取る。
受け取ったあと私の顔を見て驚いた顔をする。なんだろう?私なんか付いてる?
「あれ?もしかして同じ小学校だった相楽さんじゃない?」と言われる。言われるが私はこの男の人が誰か分からない。「確かに小学校の時は相楽だったけど…。ごめんなさい。貴方は??」正直に聞いてみる。「あー、覚えてないよね?結構昔だしね、俺5年の時同じクラスだった中本!中本大樹!」中本、中本、、、あっ!
「思い出した!委員会同じだったよね?」
懐かし〜!あの頃は良かったよなあ、世間知らずの子どもで。
「そーそー!相楽って珍しい苗字だなあって話した記憶ある!」あったなぁ、そんなこと。
「いや、まさか手袋拾ってくれた子が相楽さんだとは思わなかったよ〜!これって運命?」と冗談交じりに爽やかな笑顔で言ってくる。変わってないなぁ、この笑顔。




ふと出会った日を思い出してクリスマスツリーの準備を進める。「ママ〜!このお星様は私が付けるー!」5歳になる娘は私たちの宝物。手袋が繋いでくれた2人の愛の結晶なんて当時の私に言ったら鼻で笑われるだろう。大嫌いな冬が大嫌いじゃなくなったあの時、あの手袋は今でも大切に保管してある。