深夜1時。
明日も平日楽しいお仕事。な訳は無いのだが、生活していく為に必要である。
だというのに眠れない。不眠ではないし、身体は至って元気で健康だ。
それなのにどうして眠れないのか、答えは明白である。
私は今怪物と戦っているのだ。これは明日が仕事だろうがなんだろうが、引くことは出来ない、負けられない戦いである。
深夜0時に戦いのゴングが鳴り響きかれこれ1時間。まだ決着は付きそうにない。これ以上起きているのは、明日の仕事に支障が出る。それは非常にまずいのだ。朝から眠気で欠伸をし、お昼を食べると仕事が手につかないほど眠くなる。眠気を我慢するのは一種のストレスなのだ。出来ればあと30分以内に倒して睡眠を勝ち取りたい。
怪物を最後に見た場所へ視線を向ける。
そこには棚が置いてあるだけで、他はだだっ広い床にカーペットが敷かれているだけ。出てきたところを見てはいないし、棚の後ろにいるのは分かりきっている。分かりきっているのだが、なんせ相手は怪物だ。そう簡単に腹を括ることなど出来ない。それに相手はすばしこいのだ。下手に動くと距離を詰められてしまうかもしれない。
一つ深呼吸し、距離を取りつつ棚に手をかける。少し揺らすが反応は無い。仕方が無いと、ここでようやっと腹を括る。
ガッと棚を斜めにし素早く視線を動かす。
そこに--居た
「そっこだぁぁぁ!」
バシンと大きな音を出し手に持っているものを叩きつける。
勝利の行方は…私だ。怪物は、見事息絶えていた。
はぁぁ、と大きな溜息を吐き持っていたハエたたきを床に下ろす。1時間にも及ぶ戦いは怪物である蜘蛛の昇天によって幕を下ろしたのだ。
「……寝よう」
勝利の余韻を味わっている暇は無い。さっと片付けて布団に潜り、疲れた体と心を休めるのだった。
かち、かち、かち
規則的な音が時を刻む
年中無休のそれは時折元気を無くし活動を辞めるが、こちらが電池を入れ替えればまたすぐに仕事を再開する
感情も無い、不満も言わないで使命を全う出来るのは羨ましい。
対してこちらは毎日疲れ果て、不満ばかりの日常だ。立場を入れ替えられるのならどれだけいい事か。
そんな事を考えても仕方無いのだが、