涙の跡
涙の跡を見せないようにしてきた。
泣いたと気付かれたら、申し訳なくなるから。
泣いてごめんねって、言いたくなるから。
ひとり、夜に泣いていた。
声を殺して、心を抑えて。
涙の跡はできなくなった。涙が流れないから。
それでも、見えないところに涙の跡があった。
「涙で赤らんだ君を、僕は見逃してない。」
泣いていない私を見て君は言った。
半袖
普段は長袖の君が、今日は珍しく半袖を着てきた。
真夏。川に行こうと誘ってくれた君は、川に足を突っ込んでバタバタさせながら
「川に来るって、普段しないでしょ?」
と言ってにっこりと笑った。
木陰の中で顔が綺麗に映っている君は、とても美しかった。
もしも過去へと行けるなら
もしも過去へ行けるなら私はどうすれば良かったんだろう。
あの時ああじゃなければ、今私を苦しめるものはないはずなのに。あの時なにも話さなければ、私は否定されなかったのかな。
過去へと行けるのなら、私は何をしていたのかな。今のいいことも、過去で何かしたら変わってしまうのだろうか。それなら、過去も怖い。
過去に行けるのは、御伽噺だけでよさそうだ。
True Love
真実の愛。
おとぎ話でよく聞くような言葉。
そんな言葉に憧れを抱く。
この言葉を聞く度に、私の中におとぎ話が流れる。
綺麗で、可愛らしくて、心が踊るようなお話。
現実にあるかは分からないけれど、私の心を躍らせてくれる言葉。
誰かに向かって言ってみたい。
これが、真実の愛だよってね。
星を追いかけて
星を追いかけて、知らないところに来た。
周りには何も見えない。
少し奥まで進むと、開けた土地に出た。近くに小高い丘が見える。行ってみよう。
私が追いかけていた星は、いつの間にか見えなくなってしまっていた。天の川に混ざってしまったみたいだ。
小高い丘から町が見えた。ビルや橋が光っている。奥には飛行場も見える。
「星みたいだ。」
私は街を見てそう思った。
星は私の上にあるはずなのに。
街には色々な星が見えた。嫌なことがある星。希望を持って光っている星。なんでもなく、ただ生きる星。
私は空を見上げた。
空の上の星は、ただ何事もなく、静かに輝いていた。