厚手のコート、長袖、マフラーに手袋。
冬の寒さを凌ぐには温かな装いが欠かせない。
部屋には暖房を入れて、温かい飲み物をマグカップに並々と注ぐ。立ち上る湯気が寒気を忘れさせ、体に熱を与えてくれる。
厳しい冬の寒さは、もうすぐそこまで近づいている。

「お題　冬支度」#72

時を止めて

どこからともなく香る、鼻をくすぐる香り。
小さなオレンジの花弁は鈴なりに、深い緑の葉に広がる。
木々を飾る可愛らしい花は、さながら道端を彩る黄金の様に、今年も秋を彩る。

「お題　キンモクセイ」#71

分かっていたんだ。
どんなに願おうとも、いずれは去ってしまうと。
永遠なんてこの世界に無いと、最初から知っていたのに。
それでも、貴方だけは。
貴方だけは特別だと、何の根拠もなく、信じてしまった。
いずれは私も、貴方の元に行けるのかしら。

「お題　行かないでと、願ったのに」#94

広大なホール。
ガラスケースに入れられた、歴史資料達。
ページをめくるように、時間を遡っていく。
現在に至るまでの過程。その生きた記憶を、巡り巡っていくと、ある一角に目を留める。
影に隠れたケースの中には、青い蝶。
今にも飛び立ちそうな剥製の蝶。
呼吸の止まったその昆虫は、今も夢の中で、花の蜜を吸い続ける。

「お題　秘密の標本」#70