3/31/2024, 7:49:51 AM
『なにげないふり』
どうして俯いているの?
声の主から返事はない。
わかってはいる。私が今やってることなど、萎れた花に水をあげるのと同じことだから。
「食べる?」
野良犬は俯いたまま、こちらを見ている。数分後、食べ物を口でひったくって逃げていった。
「はあ……。可愛げがないなぁ。」
野良犬に可愛げなど求めても仕方はない。
気分転換の散歩なのに、どこまでも続く青い空すら今は少し眩しくて煩わしくさえ感じてしまう。
ここは、田舎といっても、店がないほどのド田舎ではなく、何駅か歩けば、食料品を徒歩で買いに行ける商店街が存在する。ショッピングモールも車で行けるし、本屋だって自転車で買いに行ける距離にあるのだ。
そんなこと言ったって、このもやもやは消えないだろう。だって、この不安は言葉に表せないからだ。
なんとなくわかってはいる。将来の不安なのだろう。
齢24にしてまだ家に帰省している私は大学を中退して、現在は母親とバイトをしながらせっせと暮らしているからだ。
きっと、こんな不安を感じている人などたくさんいるのだろう。
学生なら勉強に対しての不安、社会人なら、人生設計をうまくたてれるかの不安、家族を持ったら、家族との接し方の不安……。
悩みなど誰にだってある。だから、悩みだしたらきりがない。
「ただいま」
「おかえり」
それでも、時間は進むのだから、人は今日も前に向かおうと思って生きるしかないのだろう。
小さな幸せを見つけるため生きようかなぁなんて軽い考えながら、私は今日も、掃除のために窓のカーテンを開けた。