あなたの時間をわたしにください
こんなところで
あきらめるなどと言わずに
途方もない時間の果てに
あなたは見つけるんです
灰色の日々に
ひとつ またひとつ
色を灯していくことは
あなたが生涯をかけて
やり遂げなければならない
大きな仕事ではありませんか
これからあなたは
どんな色に出会い
どれだけの色を
自分の中に灯すでしょう
たとえ何十年かかっても
少しの色しか見出せなくても
あなたが懸命に灯した色が
ほかの誰かをもやさしく彩る
そんな日がきっと来るのです
あなたが見る何気ない風景も
人と分かち合えるなら
より一層美しく
色とりどりに輝くのです
その日を目に映すまで
あなたという色の灯を
けっして消さないでいてください
#色とりどり
なんのために
この雪を
降らせるのですか
あなたのように
真っ白に
美しく生きられたら
そんな戯れ言を
口の端にのぼらせるのも
罪なような気さえして
このけがれなき白い雪を
ここに敷き詰めて
すべて隠してしまえたらと
雪よ降れ
わたしに
雪よ降れ
あなたに知られぬように
#雪
わたしがいつまで生きられるか
わからないように
きみがいつまで生きられるかも
わからないのだから
こうして仲よく
身を寄せ合っていられる時間を
無駄にしちゃいけない
きみをもっとだいじにしなきゃ
きみをちゃんとしあわせにしなきゃ
そう思うのに
いつか消え去ってしまう明日を思い
ふいに足がすくんでしまう
きみとわたしは
今ここにある
それだけは確か
見えない明日じゃなく
見てきた昨日でもなく
今だけを
きみと一緒に
#君と一緒に
首もとまでしっかりと
寒くないように
厚手の上着を着込んだけれど
今日は風もない
穏やかな冬晴れだ
背筋をのばして
どこまでも歩けそうだ
ピンと冷たい空気に
身体が目覚めていく
マフラーをはずして
汗ばんだ肌に冷気が触れたら
子どもみたいにはしゃぎだす
わあっ
と叫びだしたいくらいの
自分を隠しているんだよ
誰も知らないだろう
この年老いた身体の中にはまだ
子どもの自分が住んでいるんだ
#冬晴れ
冬のアイスクリーム
冷くてあたたかい冬の日の。
舌の上で溶ける甘やかさ
夏とは違うどこかが。
大人になったら
子どもとは違った味わい方があるのだと
わたしは少し
しあわせの味わい方を知ったのだ。
#幸せとは