「部屋の片隅で」
部屋の片隅 膝小僧かかえてため息
ひとつ ふたつ みっつ
部屋の片隅 今日は雨
窓ガラスには 雨の雫が流れ落ち
イヤな気持ちも 流れ落ち
部屋の片隅 夕暮れ時は 雨があがって
陽がさして いつしか こころが
軽くなる
部屋の片隅 膝小僧かかえてため息
ひとつ ふたつ みっつ よつ
ため息にイヤな気持ちを閉じこめて
たくさん たくさん はき出して
そしたら こころは 軽くなる
たくさん たくさん はき出して
そしたら こころは 軽くなる。
©️紫翠
「眠れないほど」
薄明かりの部屋のなかで
ぼんやりと天井をみている
何時ごろなんだろう
ミステリー小説の展開が気になって
眠れないわけでもなく
メールの返信がずいぶんとこないから
眠れないわけでもない
ふと目が覚めることは ある
眠ることは いったん
夜に 自分を預けることだ
そう 朝までの間
そうして 何も憂うことなく
ただ ただ 眠る
眠りに落ちる
眠れないほど 何かに夢中になるとか
眠れないほど 気になることがあるとか
眠れないほど なんてことは
いまは ないから
夜に 自分を 預ける
からだとこころを 預ける
やさしく 包み込む 夜
©️紫翠
「さよならは言わないで」
何も言わずに別れることは
ふたたび逢えることを信じているから
会うことは
別れること
会わなければ別れることはないから
出会ってしまったものは
どうすることもできない
抗うことはできない
いつかまた会える 会いたい 会う
だから
さよならは言わないで。
©️紫翠
こんなに近くにいるのに 遠く感じる
こころが離れてしまった
距離はいつのまにできるんだろう
気づいたら いつのまにか遠く離れて
遠く離れていたときには 近くに感じる
交わす言葉が そっと寄り添ってくれた
距離など気にせず 側にいるかのように
距離と気持ちの程よいバランス
きっと たぶん 遠く離れていることは
同じ空の下にいるってことを
お互いが あらためて知るように
そして もっと仲良くなれるように
距離があるのだと知った
距離は切ないもので逢いたいもの
距離は時間で隙間を埋めていくもの
そう気づきたかった
もう少し早く気づいていたら
離れた今も
こうして
同じ空の下に生きている
©️紫翠