ーまた会えるよね?
そう尋ねた僕に君は言った
「うん、会えるよ」
俯き加減の顔は夕日の逆光でよく見えない。ややあって振り向いた君は、悪戯っ子みたいな顔で笑って言った。
「私に会いたくなったらいつもの場所に行ってみて よ!私はいつでもそこに居るからさ。」
月日が流れて、君がもうこの世界にはいないという事実を受け入れられるようになった頃。僕はいつもの場所ー君と僕の秘密基地ーに足を運んだ。暫くぶりの少し埃の積もったそこには、大きな木箱が置かれていた。開いてみると中には16冊の鍵のかかった手帳が入っていた。1冊手に取ってみる。手帳に貼られた付箋にはこう書かれていた。
ーヒント:私たちがはじめて行った海外旅行ー
僕はすぐに合点がいった。そして翌週、僕はヨーロッパ、地中海へと旅立った。君が隠した鍵を探しに。
あれから20年、僕は学校を卒業した後も仕事の合間を縫って君の隠した鍵を探し歩いた。手帳には君と過ごした沢山の思い出が綴られていた。出会った頃から書いていたなんて、君はまめだね。僕は君のこの壮大な計画にちっとも気がつかなかったよ。それとも君は気づいていたのかな。君の命が僕よりずっと短いということに。今日、僕は最後の手帳を手に取った。
ーヒント:夕日の綺麗な…ー
最後は涙で滲んでよく読めない。それでも僕にはすぐに分かった。
夕日の綺麗なあの海岸。君と最後に話したこの場所で僕は最後の手帳を開いた。涙を流して佇む僕に優しく微笑みかける妻の向こうに笑う君が見えた気がした。
『君が隠した鍵』
今日は12月25日。眩いイルミネーション、行き交う人々の声。外は「クリスマスの喧騒」で包まれていた。私は暗い部屋で1人スノードームをひっくり返す。1つ1つ丁寧に雪を降らせていく。家族と過ごす幸せな時間、友達と話す楽しい時間。全部、全部スノードームに閉じ込めた。
『手放した時間』
目の前を真っ赤な葉が舞い落ちる。それをそっと摘み上げ、落ちてきた方に目を向ける。可愛らしい実と目が合った。こんなところにハナミズキの木があったのか。新しい発見に少しだけ心が躍った。
ーふと目を上げると、山の端は暮れなずむ夕日に赤く染まっていた。
『紅の記憶』
穏やかな春の昼下がり、椅子に腰掛けふわふわと微睡んでいた私は柔らかな風に頬を撫でられた。カーテンを揺らした風が夢の中に暖かな春の匂いを運んでくる。ひらひらと舞い踊る蝶達は果たして、夢か、現か…
『夢の断片』
私は机の引き出しからインクの入った瓶を取り出す。紅葉色の便箋にガラスペンを走らせる。見えない未来を描き出す。明るい明日へと祈りを込めて。
窓の外には静かな秋の月が微笑んでいる。
『見えない未来へ』