3/23/2025, 1:42:16 AM
bye bye
「もう、ここに来てはいけないよ」
鳥居の上に腰掛けて足をゆらゆらさせながら、友達はそう言った。
「なんで?」
「お前はもう大人だから」
片手に持った卒業証書を握りしめる。私はもう、大人になったのだろうか。こんな模造紙に大人と子供の境を決めつけられてしまって良いのだろうか。
「大人になったら貴方に会いにきてはいけないの」
「駄目ではない。けれど、きっと見えないよ」
赤い耳飾りを風に揺らしながら友達はへらりと笑った。
二人だけの境内をぬるい三月の風が吹き抜けていく。
「大人になんて、」
学校終わりに来れば、いつも友達はここに座っていて、二人で話しをするこの時間が大好きだったのに。これだけしかいらない。私は、これだけしか。
「大人になりな」
友達はいつもの様に笑った。
「なんて言うんだっけ、別れる時の挨拶。お前たちがよく言ってるやつ」
ああ、と呟く。
「ばいばい」
神は子供には見えない。私は大人になったようだ。