命が燃え尽きるときまででいい。
燃え尽きて灰になって、風に吹かれたらもうなにも残らないんだ。
なら、どうやって生きたっていいじゃないか。
どうせ消えてしまう命なら、やりたいことをやったもん勝ちなのだから。
命が燃え尽きるまで、とにかく生きろ。
─命が燃え尽きるまで─ #64
「いま、会える?」
それはなかなか寝付けない夜のこと。
その電話越しの声が、ひどく震えていて消えていきそうだったのを覚えている。
「会えないわけ、ないよ」
恋人からの電話に、体をベッドから起こした、三時半のこと。
電話は切らないまま、着替えて両親がちゃんと寝ていることを確認して。
僕は夜に、貴方が待っている夜に、逃げた。
夜が明ける前に、貴方との関係がバレてしまう前に、貴方に会いに行く。
─夜明け前─ #63
きっとどうせすべてなくなる。
そのとき落ちていた恋でも、
そのとき本気だった恋だとしても、
それが永遠なわけないし、いつか終わりがくる。
なんでもそうなのだろう。
いつかは消えてなくなるものに縋って、一喜一憂するのはなんて無駄なことなんだろうと思う。
強制的に始めさせられて、強制的に終わらせられる人生。
そんなもの、ちゃんと生きようと思えるわけがない。
でも、おわりがなかったらもっと生きようと思えないのかもしれない。
人の生ってなんのためにあるのだろう。
そうやって人生に諦めを感じているからかもしれない。
私が本気の恋をできないのは。
─本気の恋─ #62
カレンダーをちらりと視界に捉える。
きっとそれは死への道のりが記されたもの。
ぱらぱらとカレンダーのページをめくる。
…ああ、今年だけでまだこんなに生きなくてはいけないのか。
─カレンダー #61
求めてしまうのは、その温かさを知ってしまっているから。
そんなもの、最初からなければなにも感じなかったのに。
ああ、もう。
─喪失感─ #60