0からの
0(ゼロ)と知り合ったのは5年前。
彼の本当の名前は知らない。
きっと彼も僕の本当の名前は知らないだろう。
彼は僕をQ(クイーン)と呼んだ。
男なのにクイーンだなんて嫌だと思った、けど組織の言うことは絶対。どんなことにも逆らうことはできなかった。
国の極秘諜報機関。
そこには様々な理由で戸籍を捨てた人間が集まっていた。
0は元々孤児で身寄りのないところを拾われた。
僕は両親が事故死し、金の代わりに組織に売られた。
境遇が似ている僕らは自然と親しくなった。
0は僕を気に入ってくれて任務パートナーに選んでくれた。
ある日の個別任務で、0は帰らぬ人となった。
突然のことだった。到底受け入れられなかった。
昨日まで生きていたのに、隣で笑いあっていたのに。
「Q、これ 0 からの…。任務中の死はよくある事だ。…まぁ、しばらくゆっくり休め。」
別の組員からシガレットケースと1本のタバコを預かった。
ケースには"Z.R" 彼の本名のイニシャルだろうか、そしてタバコには小さくメッセージが遺っていた。
「Dear Q You’re special to me. 0」
僕は彼の形見を握りしめ声を殺して泣いた。
同情
これはただの同情だ。
女も男も好きになりきれなくて中途半端で。
"好き"って何なのかわからなくなって、知りたくて、手当り次第に色んなやつと遊んだ。
みんな「好き」だと言ってくれるが俺は返事ができなかった。そんな時に出会った。
そいつは今までの子達と違って俺を慰めたり優しくしたりしなかった。
ただひたすら、俺を軽蔑して見下してゴミみたいに扱った。
けど、それが俺に本物の「好き」という感情を芽生えさせた。
俺はそいつに何度も何度も、その感情をぶつけたが「俺は嫌い」だと一瞥された。
酒を飲んだ日、そいつに少し隙ができた時に俺は感情をぶつけた。
「お前のこと好きだ。…本気なんだ。どうしようもなく好き。好き、好き、好き。」
いつもなら足蹴にされるのに、真剣な顔して俺を見つめてきた。
「…はぁ。……あんまり好き好き言ってると効果が薄れるぞ?本当に伝えたい時だけ言え。」
「え?」
俺の顔を鷲掴みにすると軽く唇を重ねた。
「好きだ。…って、こういう風にな。わかったか?」
これは、同情。ただの同情のキスだ。
枯葉
あんな男を好きになったばかりに、私の人生は地に堕ちた。いや、あいつと同じ所に堕とされたんだ。
無害な顔して近づいて気づいた時には私の心の奥の深いところまで入ってきた。
「僕と君は似ている」なんて優しく囁いて。
私の全てを作り替えて、抜け出せない奈落の底へ堕として。
堕ちた先で、私の心は食い尽くされた。
まるで落ち葉が虫に喰われて枯葉になるように。
それでも、私は辞められなかった。
彼は絶対に手を出してはいけない麻薬だったんだ。
今日にさよなら
ある人が言っていた。
「明日死ぬかもしれないから、今日という1日は最後の最後まで楽しく過ごしたいんだ。」
何となくその言葉がずっと胸にあって、次第に自分も同じ心持ちで過ごすようになった。
決して死にたいわけじゃない、けれど常に死というものを意識した。
そして、"今、生きている"という事実をより大事に思うようになった。
今日も充実した1日を送れた。
満足して布団に入り目を閉じる。
「さようなら。」
僕は1日生き抜いた今日に別れを告げる。
お気に入り
この世に生まれて、お気に入りを何個見つけた?
お気に入りの洋服。
お気に入りの歌。
お気に入りの映画。
お気に入りの食べ物。
お気に入りの場所。
ただ好きになるのは簡単だけど、自分にとって特別な物になるのはそう簡単なことじゃない。
生きているうちにどれくらいお気に入りと出会えるだろうか?