雪明かりの夜
今日の夜も予報通り雪が降った。
昨日から降った雪で街は真っ白く包まれていた。
俺は待っていた。
現れなかったらもう、この関係は終わりにする。
もう待ちくたびれて帰ろうとした時、息を切らして走ってきた。
「おせーよ。バカ。」
嬉しくて綻んだ顔を見られないように後ろから蹴りを入れる。
「…はぁ、はぁ、ご、ごめんっ。今日に限って両親が居て抜け出すの苦労して、ほんと、ごめんね。」
「いいよ。来てくれたしな。」
しばらく、冬の夜道を並んで歩く。
「…お前さ、遠くの大学行くんだろ?」
「…うん。そっちは、卒業したら地元で就職でしょ?」
「まあな。俺は勉強なんかしたくねぇし、早く金稼ぎたいしな。」
「そっか。」
会話が途切れて、気まずい沈黙が続いた。
俺が不意に立ち止まるとお前は振り向いて迷わず歩み寄って、軽く俺の唇に自分のを重ねた。
「……あの、さ。お前にとって俺って何?卒業するまでの暇つぶしとか遊びとか?」
自虐して言うと、胸ぐらを掴まれてさっきより強く重ねた。
「遊びなわけない。僕は、本気で君が好きだ。」
また、キスしようとしてくるから慌てて止めた。
「わ、わかったわかった!伝わった!…いくら夜だからって、今日は雪明かりで外明るいから誰かに見られたらやばいだろ。」
「雪明かりの夜、僕と君が付き合った記念日。覚えやすくていいね。」
「なに馬鹿なこと言ってんだよ。」
満面の笑顔でそんなこと言うから、俺もニヤける顔を抑えられなくて、照れ隠に頭を引っぱたいてやった。
祈りを捧げて
病気がちだった僕に母はよく言った。
「祈りを捧げなさい。祈りはいずれ届く。とにかく、毎日祈りを捧げるの。」
母を信じて僕は毎日毎日、祈りを捧げた。
「早く病気が治りますように。」
無慈悲にも僕の命は呆気なく終わった。
祈り?そんなもの無意味だった。
母を見ていると、性懲りもなく未だに祈りを捧げているようだった。
一体、誰に何を祈っているのか僕は母の近くに行き耳を澄ませた。
「……ありがとうございます。ありがとうございます。息子を消してくれて。ありがとうございます。」
そうか母は、祈りを捧げてなんかいなかった。
僕の死を願っていたんだ。
遠い日のぬくもり
ツインレイ。私と彼はきっと前世でひとつの魂だったんだ。
出会ったのは本当に偶然で初対面の時に懐かしい感覚になって、つい無意識に「久しぶり」と声をかけてしまった。
けど、今思うと必然だったのかななんて思う。
誕生日が近くて、好きな食べ物も好きなことも好みが似ていて、嫌いなものも似てる。
嘘をつくと右耳の後ろを触る、その癖も一緒。
怖いくらいそっくりだった。
でも、1番の感覚は触れた手の温もりだった。
彼の手に触れた瞬間、
「あ、私(俺)とこの人(この子)は昔、ひとつだった。」
そう、お互いの手と手から伝わった。
揺れるキャンドル
思い立って、夜の街に出た。
真っ暗で体の芯から冷えるような寒さの夜。
雪はまだ降っていない、けれど、もうじき降るだろう。
商店街に着くと、イベントブースでキャンドルナイトはやっていた。
周りはカップルや家族だらけで少し肩身が狭かったが、そんなのどうでもよくなるくらい、無数のキャンドルが揺蕩う光景は圧巻だった。
しばらく楽しんで帰ろうとしたとき、ちょうど空から雪が降ってきた。
「……あぁ雪。きれい、だけど…寒い。」
「やっぱ降ってきたかぁ。…さみ〜。」
お互いの独り言が聞こえて、目を見合わせた。
「あはっ、雪、降ってきちゃいましたね。寒いっすねぇ。……あ〜、あの。良かったら、もう少しキャンドル見ていきません?」
気さくに話しかけてくれた彼に最初は警戒したものの嫌な気はしなかったから、私は「はい。」と頷いた。
光の回廊
それは失くしたものだけを照らす道。
手を伸ばしても届かない数多の思い出が、淡く光って並んでいる。
笑った顔と声、触れられなかった手、伝えることができなかった感情。
進む度に胸は硝子片が刺さるようにチクチク痛む。足は前へ前へ進みつづけ、立ち止まることは許されない。
この回廊の出口の先に待つのはきっと再会なんかじゃない。
そんなこと、わかっている。
それでも私は、光の中を歩き続けた。
歩き続けた先には、きっと新しい出会いが待ってるから。