学校と家の単調な通学路に
公園があった
ぼくの小さな生活圏の一区画だった
そこで放課後、休みの日など
遊んでいるとやがて
そこでよく目にしていた若者に
声をかけられた。
その男性は親切で
楽器の演奏に長けていた
「すごく日焼けしてるね」
と元々色黒で
真っ黒に日焼けしているぼくを
褒めた
色が黒いのはコンプレックスに
もなっていて、そう言われて嬉しかった
「キミ、かわいいね」
彼はぼくの容姿を褒め
知らず知らずのうちに
ぼくが母子家庭の子であることを
聞き出していた
アニメソングを
演奏してくれたりした
公園に出かけるたび
声をかけられ
やがて僕は彼の演奏を膝の上で聴いた
夕焼けに悲しくなりながら
ある日
困っているから来て欲しい
とそのお兄さんに手を引かれた
どこ?と聞くと
いいからと言われて
引きずられるようになった
掴まれている手首に
ものすごい力がかかっていた
行き先は個室タイプの
ログハウスを模した公園の
公衆便所だった
男性は乱暴に僕を
トイレの床に転がした
男性は変なことをしていた
「お前のママとパパもやってんだろ?」
といい、僕にもそれをやった、、
「ママに言うなよ 叱られるぞ」
僕に口止めしてから彼は便所から出て行った
僕は裸でトイレに残された、、
なんだかいけないことをされた気がした
自分は悪くないのに
だから、ママには話さなかった
学校の先生、周りの大人にも
どこにも、誰にも話すことはできなかった
そのお兄さんはそれ以降、姿を消した
通学で横を通過しても
しばらくその公園にはいれなかった
線路向かいの逆方向の遠い
公園に行って遊んだ
しばらくは穏やかで
優しそうな若い男性を見るだけで怖かった
ママと買い物で通りかかっても
ここでのことは黙っていた
だから、ママは自分の息子が
チカンにあったことを知らない、、
悔しい、、
じーっと見てると
遅い
なかなか進まない
全く動かないと言ってもいいほど
だけど
ゲームやら
詩を読むこと、書くこととか、
集中してたり
楽しいことをやってると早い
時計の針
あの時あんなふうに言わなかったら
あの時素直になっていれば
あの時気持ちを伝えていれば
あの時素直にゴメンといえたら
あの時さよならできたなら
あの時怒ることができたなら
あの時涙していたら
あの時笑顔になれたなら
あの時夜を共にしたら
あの時あそこで別れなければ
あの時あの場所に行かなければ
あの時右折を選んでいたら
あの時好きだと思い切って叫んだら
あの時キスしておけば
あの時甘えていたら
人生は変わっていたかもしれない
瞼には何人もの人の顔が浮かぶ
溢れる思いと共に
1000年先でもいいから
また
ママの子に生まれたい
僕はママの勿忘草
忘れ去られて
成長し
雄蕊から雌蕊へ
花粉を弾き
蓋粒のタネをなした
その種は勿忘草にはならなかった
男児二人となり
しなやかな子鹿
やがて勿忘草を啄む
立派な雄鹿になるだろう
僕はママからの命を繋いだんだ