イルミネーション
年賀状用ポスト口
ダウンジャケットとブーツ
手袋とマフラー
街を歩くと
置いていかれてることを
思い知らされる
『冬のはじまり』2023/11/309
君の探し物は
僕のポケットの中
見つけてしまえば
君はそれで穴を塞いで
咥えて
脳幹に新しい穴をあけるだろう
だからずっと
君の探し物は
僕のポケットの中
『終わらせないで』2023/11/2911
産まなければよかったと、頬を叩いた手のひらで
撫でてくれた日もきっとあったのでしょう
ずっと貴方を恨んでた
何度も殺す想像をした
結局呆気なく見送った、涙も後悔さえもなかった
しかし今、私一人膨らむ胎を抱えて
ようやく貴方を人間として受け入れる時がきました
恐らく私は貴方より酷い母となり
恨みの連鎖は止められません
ごめんなさい、ありがとう
ただ一つだけ伝えたいことは
愛とは
未熟な人間にとっては
とても柔く脆く
しかし、それでも在るものだ
ということです
我が子よ
どうか、どうか
健やかに
今だけは純粋にそう思えるの
明日はわからないけれど
『愛情』2023/11/2811
あの時、私は
あなたの大袈裟な反応にしかめ面しながら
素直に布団に押し込まれて
欲しいものの問いにプリンと返して
ドアを閉じる音を見送った
柄にもなく頭を撫でた
あなたのせいで熱が上がって
プリンもゼリーも買ってきた
あなたのおかげで熱が冷めたの
そんなこと思い出しながら今、私は
平気な顔してお勤めに向かって
勿論平気なままで帰ってきて
自分で布団に包まって
帰り道買ったちょっといいプリンを頬張る
これくらい大したことないわって
意気込んで熱をあげて
誰にも気づかれないのねって
寂しさに少しだけ熱を覚まして
強いって、さみしいなって
あなたにもらったプリンがおいしかったって
布団の中の世界で、今日だけは泣いてしまおう
『微熱』2023/11/2710
陽の光に愛され
地上を歩くあなたと
暗い部屋
ベッドの上に横たわる私
生物学上同じ生き物
だのに交わることのない世界
花は好きです
実を結ばない花
ただ、花屋で買って
飾って枯らすだけしかできないけれど
『太陽の下で』2023/11/2611