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1/2/2024, 1:35:49 AM

 新年はとてもめでたい日であるし、そう思い込まれているただの寒い日でもあるが、私には後者に思われて仕方がなかった。どこもかしこも店はやっていない。店もサービスも良くて二日からでとにかく暇な一日なのだ。ただ、やってる店に世間が団欒をする中で働かせてしまって申し訳ないとは僅かに思う。
 私は年初めからケーキを買いに出かけた。なにもお節料理の代わりというわけではない。今年は重箱に入ったものを食べておらず、質素極まりなく年を越し新年を迎えた。そんなだから、当然クリスマスや年越しそばも疎かにして、こっ酷く彼女に叱られた。こういうのは理屈ではないのだと。理屈で言うなら私はあんたでなくたっていいのだとまで。それを聞くと途端に身体が冷えて、それをいうなら俺はお前でなくていいなんて理屈は全く言う気にならなかった。一理ある。青い顔で頷いて、私は贖罪のケーキを買いに出たのである。
 新年早々やっている数少ない店だけあって、個人経営といえど店頭はなかなかに盛況していた。たくさん並ぶ、ケーキと洋菓子。私はあまり詳しくないから、しばらく店内をうろうろ探索するしかない。じっとしていられない子供が後ろを駆け抜けてアイスクリームの棚に張り付いた。
 いざショーウィンドウを前にじっと品定めしようとすると、焦る。店内の客は皆レジ横の小さなショーウィンドウを見にやってきている。私はうんうん唸りながら数度横へ退け、数度流された。彼女の好みがさっぱりわからないのだ。
「お店の人?」
「わ」
 私のコートの端を、小さな子どもが引っ張っていた。
「違うよ、客だよ」
「ケーキ買わないでしょ?」
「買うよ」
「どれ?」
「えー……これとか」
「あ! だめ! ねえおかあさん、ダメだよね?」
 子どもはなぜか母親の方を振り返って、ダメでしょ? と騒ぎ立てた。母親は人気だからと曖昧にその子を宥める。
「お姉ちゃんはなんでもって言ってたんだから絶対それなわけじゃないでしょう」
「でもおねえちゃんいつもこれじゃん。くだもの好きだし、いつもタルトがいいって言ってる。食べたいよ」
 この親子はこのケーキでなくちゃいけないのか。そうか。私はいいんですよと再び売り場を離れた。

あきた