「みかん」
私は別にみかんが大好物ではない。
でも、冬にコタツで食べるみかんは好きだ。
コタツでぬくぬくしながら、爪を黄色くしながら、
特に何をするでもなく、ぼけっと食べるみかん。
多分みかんが好きというより、
コタツでみかんを剥いて食べようかなと思うくらい
時間にも心にも余裕がある日が好きなのかもしれない。
「冬休み」
中学生の頃の国語の先生の言葉を今でも覚えている。
「数年お休みするのなんて、
長い人生の中では夏休みとか冬休みみたいなものよ。」
その先生は、その後すぐに家庭の事情でご退職された。
出会って関わったのは、長い人生の中のほんの一瞬。
でも、間違いなく数少ない私の恩師のお一人。
「手ぶくろ」
かじかんだ手を温めてくれる彼はもういない。
別れたことに後悔はないけれど、
手に感じる寒さが勝手に寂しさを訴えてくる。
そんなことで寂しさを感じることが無性に嫌で、
今年頑張った自分へのご褒美に手袋を買った。
手袋をしてみた。してみたのだが…
「…寒さが原因の寂しさじゃなかったか」
本当の寂しさの理由なんか、知りたくなかった。
「大空」
空を見上げて君を想う。
連絡先ももうわからないけど、
きっとこの空の下のどこかで元気だと信じてる。
それだけで、私も元気でいられる。
「とりとめもない話」
私はじいちゃんばあちゃんっ子だ。
暇な日はわざわざ電車に乗って会いに行くほど。
別に特別なにかするわけじゃない。
でも、行くだけで喜んでくれる。
存在するだけで喜ばれるって何よりも幸せ。
冬は私とじいちゃんとばあちゃんでコタツに入って
とりとめもない話ばかりする。
何度も聞いたからオチまで全部わかってる話。
それでも毎回わざと初めて聞くかのように聞く。
二人が楽しそうに話してくれることが大事だから、
いつが最期になるかわからないから、
二人から聞いたとりとめもない話を忘れたくないから、
オチまで知ってるとりとめもない話を聞き続ける。
いついつまでも、この時間を忘れないように。