セキレイ

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4/25/2023, 3:47:18 PM

流れ星に願いを


星に特段興味がある訳じゃない。星座だって、オリオン座くらいしかわからない。プラネタリウムも一人だったらきっと行かない。だけど、彼と出会ってから夜道で空を見上げることが増えた。
東京の空は濁ってて、一等星が見えたら万々歳。本当はあの星はなんとかっていう星座の一部だって、少年のような目で空を見上げる横顔を見るのが好きだった。星座の名前は覚えていないのに、彼のその緩んだ目元はよく覚えている。
だから、こうして1人家路に向かう最中、彼の言っていた一等星を時折探してしまうのは、星が好きになったからじゃない。彼に会いたいから。彼との思い出が恋しいから。
同じ日本にいたなら、この星をあなたも見ているってそう思えたのに、遠い異国では今、燦々と太陽があなたを照らしているのかもしれない。

ねぇ、先輩。今夜は東京でも流れ星が見れるみたいです。

そう伝えれば、深夜にこっそり会いにいてくれた彼はもういない。伝えたって、会えない。会いに来てくれない。同じ星を見て寄り添い合うことだってできない。
だから、今夜、私は流れ星を見ない。
異国で励む彼に帰ってきて欲しいだなんて、身勝手な願いを、流れ星に聞かれるわけにいかないから。

4/24/2023, 3:47:48 PM

私の、なけなしのストッパー。もうこれ以上、彼を思わないようにするためのルール。彼のピアノを聴きに音楽室に行かない。必要以上に話しかけない。中学生までの、ただの大人の付き合いに巻き込まれたあの距離に戻る。
なんて、こんなに必死に言いつけて滑稽になる。
彼にとってはいつだって、大人の付き合いに巻き込まれただけの、顔見知りでしかないんだから。
彼の中に私の席はない。どんなに羨んだって、あの子のような席は用意してもらえない。あんな風に見つめてもらうことはない。
これ以上焦がれたってなんの意味もない。だから大丈夫、時間が解決してくれる。これが当たり前になる。
そう必死で言いつけた。