「<絆>って聞くとさ、なんか概念?みたいなものを思い浮かべるよな」
『あー、わかる』
『なんだろ、<オレたちには絆があるんだ!>みたいな?』
「少年漫画かよwww」
「いやでも言ってることはわかる」
「ところでさ、ウチらに<絆>ってあると思う?」
『え?』
『急にどしたん?』
『いや、あるとワタシは思うよ?××がどう思ってるか知らんけど』
「あ、あるって言ってくれる?」
「よかったわー、そんなんないって言われてたらショックやし」
「うんそれでさ、」
『それで?』
「<絆>って字は」
「<ほだし>っても読むんやってな」
『ほだし?』
「勝手に切らんでな?ウチらの<絆>」
『いや、どうしたん目がマジやんwww』
当然やんな
この<絆>はずっと、ずっと続くから
たまには
スーパーで100gあたり600円くらいのいいお肉を買って
ネットで一番いい焼き方を調べて
お手製の高級ステーキを食べたっていいじゃない
たまには
何も考えず仕事を休んで
少し足を伸ばした先のおしゃれなカフェで
カフェラテを嗜んでもいいじゃない
たまにはそんな贅沢していいよね
たまにだからこそそんな贅沢していいよね
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「物憂げな空だね……」
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彼女は確かにそう言っていたが、物憂げとはどういう意味なのか。
空が感情を持つというのだろうか。いや、そんなはずはない。
そもそも「物憂げ」というのは、1)「なんとなくだが憂鬱な感じ」で、無機物に使う言葉ではないはずだ。
あの雲のことを言っているのであればそろそろ雨が降るかもしれない程度で、であれば雨を凌げるもの……傘、カッパなどが必要だ。彼女はそれを言いたいのだろうか。
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「ああ、折り畳み傘ならここにあるよ」
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よくわからないが彼女は走っていなくなってしまった。これだから「人間」というものは困る。
仕方ない。雨が降らぬうちに帰れるよう、少し脚部のモーターの出力を上げて帰るとするか。
10年前(じゅうねんまえ)のぼくへ
ぼくは今(いま)、道(どう)とくのじゅぎょうでこのお手紙(てがみ)を書いています。
ぼくが読(よ)んだ本(ほん)では、10年後(じゅうねんご)のぼくが読(よめるように
土(つち)の中(なか)にお手紙(てがみ)をうめるお話(はなし)を読(よ)んだことがあります。
でも、むかしの自分(じぶん)に送(おく)る手紙(てがみ)、というのは聞(き)いたことがなく、
ぼくも、今(いま)、何(なに)を書(か)けばいいのかわからないまま書(か)いてます。
でも、10ねんまえのぼくは かんじがよめないはずなので
ここまでのぶんにはふりがなをつけて
ここからひらがなで、かんたんなぶんをかくね。
ちゃんと おとうさんおかあさんのいうことはきくんだよ。
かべにおえかきはしちゃいけないからね。
わるいことをしても、かーてんのうしろにはかくれず
ちゃんとごめんなさいしてね。
10ねんごのぼくより
春を迎え 夏を過ごし 秋を楽しむ
蓄えは十分だろうか
かき集めたブナの実りを今一度見直す
暖かく休めるだろうか
突き抜けた穴には問題なさそうだ
さあ 眠ろう
また 春を待とう
ーー 一匹のシマリス