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3/15/2026, 8:42:55 PM

「私は将来素敵なお嫁さんになるの」
「僕はヒーローになってみんなを守るんだ」
「私はお姫様になって綺麗なドレスを着たい」
「え、、っと僕は消防車になりたい」
口々に朝来の夢を話してくれる曇りのない目に日々の疲れで霞んだ私は(いいなぁ。気楽で。能天気)そう思った。思ってはいけないことだとはわかってる。多少の罪悪感がある故、口には絶対に出さない。
「いいねー!みんなならなれるよ!先生みんなが大人になった時に会うの楽しみだなぁ」
思ってもないことが次々出てどこか虚しさに襲われる。大人って本当につまらない。
「先生ってバカなの?」始まった。私を連日悩ませてくる尚紀くん。どこか達観していて年齢に相応しくないことを言っては他の子供たちを泣かせている。しまいには、保育士である私にもこんな発言を容赦なくしてくる。
「こーら!人に対してバカとか言わないよ」
「だってバカじゃん!ヒーローとかお姫様とかそんな大人この世にいないじゃん夢見過ぎでしょ笑」
私も心の中で思ってしまう手前、これに返せる言葉が正直に見つからない。

ガラガラ…

「あらあら、夢の見過ぎは言い過ぎですよ。尚紀くんに先生の秘密を伝えますね、尚紀くんのママやパパ、ここに来てるみんなのママとパパはとっても強いヒーローですよ。この世の中はみんなのママやパパお仕事に行ってるのはこの世の中を動かすためなのよ。もし、みんなのママやパパがお仕事を『ヤダヤダ』と言ったらお菓子を買うことも電車に乗ることも電気をつけることもできないのよ。みんなのママやパパはこの世界の人を救っているのよ!だからとってもかっこいいヒーローなの!それに先生ね、保育園ではみんなとかけっこするためにズボンを履いてるけどお家ではドレスを着てダンスをしたりするから実はお姫様なんだよ」
タイミングを測ってか、園長先生が教室に入ってきて話をする。尚紀くんをはじめ、園児たちが耳を傾けては顔を輝かせる。
「ふーん」尚紀くんは納得したことを素直に認めたくなかったのか照れくさそうに返事して積み木を始めていた。
園長先生は私ににこやかに笑いかけてから園児たちと将来の夢についていろんな話をしていた。

園長先生の話を聞いて私も納得をした。大袈裟なヒーローでないかもしれないけど、確かにヒーローだと思う。そのヒーローたちがいるから私は今ここにいてこんなにも輝く星たちを近くで見守れる。
この部屋は星が溢れてる。私も何か夢をもう一度持ってみようかな。星になりたいな。