#愛情
僕に愛を教えてくれた人がいた。
その人は僕の名前を愛おしそうに呼んでくれた人だった。僕の頭をうりうりと楽しそうにかき混ぜた人だった。
僕が風邪を引けば自分の事のように苦しそうに看病をしてくれた人だった。
その人が今日、亡くなった。
僕に唯一愛を注いでくれた人が居なくなってしまった。
もっともっと僕に愛を教えて欲しかった。
僕はこれから、彼女に貰った愛を他の人に教えることにした。昔の僕のように愛を知らない人に。
今までありがとう。大好きな貴女。
#太陽の下で
太陽の下で、太陽のように笑う君に、眩しくて目が潰れるかと思ったよ。
目を細めて、口を大きく横に開いてあははっ、と大きな笑い声をそこら中にこだまさせる。
その姿を見ることが無くなって早数年。
ねぇ、また君の笑顔を、笑い声を僕に聞かせてよ。ねぇってば。
男は無機質なベットの上に横たわる女の手を握りすがり泣いていた。
#落ちていく
ヒラヒラと一葉の紅葉が落ちていく。
すぐ下の水溜まりに落ちたその紅葉は、優雅に水溜まりの中を泳ぐもすぐに対岸に着いてしまった。
その姿にきっと私もこの紅葉のように狭い世間しか知らないのだなと、ふと思うと虚しくなって、死にたくなった。
#どうすればいいの
どうすればいい、何をすればいいと聞いてくる後輩が居る。
きっとやらねばならない事は分かっているだろうに毎回毎回同じように質問をする。
何度同じことを説明しても、メモも取らず、メモを取った方が良いとアドバイスをしても覚えれるから大丈夫と謎の自信を見せる。
覚えられるなら、何度も同じ質問をするなと言いたいが、昨今の風潮ではそれすらパワハラと言われかねない。
むしろ、私がどうすればいいのと質問してやりたいくらいだ。
#キャンドル
ゆらゆらと揺れる火をぼうっと見つめていると、時間が溶けていく。
忙しい毎日に疲れきり癒しが欲しくて、以前貰ってそのままだったアロマキャンドルに火をつけた。
柑橘系の爽やかな香りに包まれて、ゆらゆらと揺れる火を眺めていたら、疲れきって強ばっていた身体が何処か緩み、やっと一息つけたように感じた。