#好きな色
昔はピンクとか水色みたいな淡くて可愛らしい色が好きだった。
だけど、その時好きだった人にお前には似合わないって言われて、好きの気持ちは涙と一緒にサラサラと流れて消えてった。
今は黒とか白みたいなモノクロな色が好き。
この好きっていう気持ちが、本物なのか、幼い頃の自分が無理やりに作った感情なのか。今となっては分からないけれど。
でも、でもね。もしも今の私があの頃の自分に声を掛けるなら、好きなものは好きで良いんだよって伝えてあげたいな。
だってその好きって言う気持ちは尊いものだから。
大人になったら好きなものを好きって言うことさえ憚られる。
それなら幼い頃くらい好きって言う気持ちを大切にしても良かったと思うの。
ねぇ、あなたはそう思わない?
彼女はそう言って儚げに笑い、僕の返答を待たずにビルの屋上から地面に吸い込まれていった。
#あなたがいたから
あなたがいたから今まで生きてこれたのに。
なぜあなたは私を置いていってしまったの?
私は言ったでしょう。あなたが先に死んだら後を追ってやるって。
その時あなたは重いなぁ、なんて軽くあしらったけれどべつに冗談のつもりは無いのよ私。
ねぇ、私を置いていかないで、置いて、行かないでよ、、、。
あと少しだけ待っていて。
すぐにあなたを追いかけるから。
#相合傘
相合傘ってさ、愛愛傘とか相逢傘って書くこともあるけど、人間は恥ずかしくないのかな。
ただひとつの傘をさすだけなんでしょ?
なんでわざわざ愛とか逢みたいな恋愛ごとに絡めようとするんだろう。
仲が良くないと出来ないからかな。
でも、仲が良いだけでいいならさ、別に友達同士でやってもいいんでしょ?
それとも、私たちはこんなに愛し合っているのよ!って見せつけたいのかな。そういう人間たちほど別れるくせにね。
うーん、愛、かぁ。僕には分からない感情だよ。
ねぇ、博士。僕にも分かるかな。
――これは産まれたばかりのロボットが、まだ見ぬ恋に焦がれるお話。
#落下
おちる、落ちる、堕ちる
あなたを好きになってから私はどんどん自分が自分でなくなってきた。
あなたに嵌れば嵌るほど、もっともっとと貪欲になる。
あなたを知りたい、あなたに知って欲しい。
あなたを愛したい、あなたに愛されたい。
ふふふ、愛という感情をよく分かっていなかったけれど、こういうことを言うのかしら。
あなたの全てを知ることが出来るなら、私はどこまでもおちていけるわ。
あなたはきっと許してくれるでしょう?
だってあなたも私の事が好きだと言ったものね。
おちる、落ちる、堕ち、た?
#未来
未来の私は何をしているかしら。
昔はよくそんな事を考えていたっけ。
夢は沢山あった。
幼稚園の頃はケーキ屋さん。
小学生の頃は警察官。
中学生の頃は介護福祉士。
高校生の頃は小説家。
どんどん難しい夢を見ては挫折して、大学生で私は平凡、いやそれ以下の人間だと改めて自覚して。
苦しかった辛かった。少しでいい特別な人間になりたかった。
テレビやSNSを見る度に同い年の『トクベツ』な人を見つけては勝手に嫉妬して。
あぁ醜い。気持ち悪い。なんでこんな考え方になってしまったの。ただ少し、夢を見ていただけなのに。
私には分不相応。
そんな事分かってる。
それでも夢を見たっていいじゃない。そう思えたら良かったのに。私はそんなに強くなれなかった。
だからね、もう未来を考えることはやめたの。
死ねばもう未来のことなんか考えなくても良いでしょう?
だって、そこにあるのはただの『無』、だもの。