#未来
未来の私は何をしているかしら。
昔はよくそんな事を考えていたっけ。
夢は沢山あった。
幼稚園の頃はケーキ屋さん。
小学生の頃は警察官。
中学生の頃は介護福祉士。
高校生の頃は小説家。
どんどん難しい夢を見ては挫折して、大学生で私は平凡、いやそれ以下の人間だと改めて自覚して。
苦しかった辛かった。少しでいい特別な人間になりたかった。
テレビやSNSを見る度に同い年の『トクベツ』な人を見つけては勝手に嫉妬して。
あぁ醜い。気持ち悪い。なんでこんな考え方になってしまったの。ただ少し、夢を見ていただけなのに。
私には分不相応。
そんな事分かってる。
それでも夢を見たっていいじゃない。そう思えたら良かったのに。私はそんなに強くなれなかった。
だからね、もう未来を考えることはやめたの。
死ねばもう未来のことなんか考えなくても良いでしょう?
だって、そこにあるのはただの『無』、だもの。
#1年前
1年前の今日、僕は事故にあった。
起きた時には全て終わったあとで、僕を轢いた人は捕まっていた。
家族は僕が事故にあったっていうのにいつも通りギスギスしてた。父と母は口喧嘩ばかり。妹はずっとスマホをいじっていた。
ある意味いつも通りと言えばいつも通り。
だけど息子が事故にあったんだからこんな時くらいは喧嘩をやめろよな。そう言ったけど無意味だった。
妹は妹でスマホを弄っていたかと思うと誰かと電話を始める始末。
1年、1年だ。
僕は1年我慢した。それでも何を言っても無駄だった。それならもう僕は諦めるよ。あなた達と家族でいることを。――バイバイ
その日、とある家族の家が火事で焼けた。
その一家の住民で生き残ったのは唯一、1年前に事故にあい、ずっと植物状態のまま病院で眠る息子だけだったそうだ。
#好きな本
好きな本は沢山ある。
今まで読んできた本はどれも面白かった。
世間的にハズレと言われる作品にも僕には刺さる物もあった。
本、本、本。僕の世界は本に埋め尽くされている。
記憶を辿ってもどの場面だろうが僕が本を離した瞬間は多分ない。
それぐらい日常に溶け込んでいる本たちで、好きな物はどれって聞かれても僕にとっては、とっても難しい質問だ。
きっと僕は死ぬその瞬間まで本に囲まれている。その時にやっと、あれが1番だったってなるんじゃないかな。
そんなに気になるなら最後まで僕の横に居てくれよ。そうすればきっと君の疑問の答えになる。
#あいまいな空
今日のあいまいな空模様はまるで今の私の心のよう。
今日はついてたけど、ついていない日。
朝、寝坊した。
電車には間に合った。
上司に褒められた。
部下には泣かれた。
タイムセールに間に合った。
買い物帰りに雨に降られた。
欲しかったものが届いてた。
洗濯物を外に干しっぱなしだった。
良いことと悪いことが交互にあって、今日の気分は良いような、悪いような。
天気に例えるなら、狐の嫁入り?
雨がザッと降ったと思ったら急に雨が止んで晴れてみたり。
あー、ほんと今日の気分は曖昧だ。
#あじさい
桜の樹の下には死体が埋まっている。とよく言うけどさ、それなら紫陽花の下にも埋まっていてもおかしくないよね。
ほら君の後ろの紫陽花もとても綺麗な青色をしている。
もしかしたら、その紫陽花の下には、、、。
なんてね、冗談だよ冗談。本気にしないでよ。
ははっ、それにしても君のビビり癖は治らないね昔から。
いやいや、バカになんてしてないさ。
ただ君の純真さが少し眩しいなと思ってね。
、、大丈夫、その紫陽花の下には何も埋まってなんかないよ。
(その紫陽花の下には、ね。)