川柳えむ

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12/23/2025, 10:41:45 PM

 テーブルの上のキャンドルが揺れる。
 キャンドルの周りにはたくさんのごちそうがある。
 でも、それは私の為じゃない。
 イエス・キリストとかいう奴の為。その誕生日の前日とかいう、よくわからない祝いの為だ。
 私だって誕生日なのに。なぜかまとめて祝われる。誕生日ですらない奴とまとめて。
 だから、私は今日という日が嫌いだった。

 ケーキが運ばれてくる。一つしかないケーキが。
 ケーキには、私の歳の数だけのろうそくが並んでいる。
「お誕生日おめでとう」
 その言葉は誰に向けたものなのか。
 私はムスッとしたまま、そのケーキを見つめた。
「どうしたの? 嬉しくないの?」
「知らないおじさんの誕生日と一緒にお祝いされても、嬉しくない」
「知らないおじさん? 何言ってるの。今日はあなたの為の日よ。あなたをお祝いする為の日」
「でも、今日はクリスマスイブだし……」
 母が溜息を吐いて、ケーキの真ん中に乗ったプレートを指差す。
「ここになんて書いてある?」
 そこには『お誕生日おめでとう』のメッセージと、私の名前が刻まれていた。
「今日は、あなたが生まれたことをお祝いする日なの。クリスマスなんて二の次よ」
 たしかに、これだけ見ると、クリスマスなんて関係ない。私を祝う為の誕生日パーティーだった。
「でも……」
「ほら、これも開けてみて」
 プレゼントを渡される。
 その中には、私がずっと欲しいと言っていた動物達の人形が入っていた。
 思わず目を輝かせる。
「お誕生日おめでとう」
 ようやく納得した私は、私の為に用意されたろうそくの日を吹き消した。

 でも、後からよく考えてみて気付いたけど、ケーキやプレゼントはクリスマスとまとめられてしまっているし、結局損している感じは変わらないんだよね。


『揺れるキャンドル』

12/22/2025, 10:40:15 PM

 異国の寺院の長い長い回廊を歩く。
 静けさが漂う庭を横目に、案内人の後を着いていく。光が射して、とても心地が良い。
 旅の中で、たまにはこんな休息の時間があってもいい。
 この寺院には、自国の王に言われてやって来た。
 魔王を倒す旅を続ける俺に、この寺院の僧正は強い力を持っている。きっと力になるだろう。と。
 でもたしかこの回廊、急にモンスターが現れるんだよな。しかも、この寺院の僧正がこのエリアのボスだったはず。かなり強かった記憶あるなぁ。
 ……ん?
 何の話だ? 急にモンスターが現れる? エリアのボス……?
 長い回廊を歩く中で、唐突に思い出した。
 ここはゲームの中だ。
 間違いない。転生というやつか。これは前世で俺がやっていたゲームだ。そして、そのゲームの主人公になっているのが今の俺だ。
 寺院だから、何か不思議な力でも働いたのだろうか。
 一瞬混乱したが、すぐに気を取り直す。
 僧正は強い。しかし、今の俺は戦い方を覚えている。きっとこれは、必ず倒せという神の思し召しだ。
 光の中で、徐ろに剣の柄を握った。


『光の回廊』

12/21/2025, 10:58:38 PM

 貴方への想いが降り積もっていく。
 たくさんたくさん。
 貴方の為に何でも買った。
 CDも、Tシャツも、タオルも、ペンライトも、缶バッジも、アクリルキーホルダーも、アクリルスタンドも、何でも。
 貴方が欲しくて。
 貴方の為に何でも作った。
 うちわも、メッセージボードも、ポンポンも、痛バッグも、何でも。
 貴方を支える為に。

 貴方への想いが降り積もっていく。
 貴方への想いが降り積もり過ぎて――。
 部屋の床が抜けた。


『降り積もる想い』

12/21/2025, 2:00:44 AM

 家の中を整理していると、鏡台の引き出しの奥の方から、古い箱が出てきた。
 その箱を開くと、かわいらしいリボンの髪留めが入っていた。
 そのリボンには見覚えがあった。
 どこで見たのか記憶を探る。そして思い出した。
 書斎の一角にまとめられたアルバムから、それを見つけ出した。
 母の、私が生まれる前の写真。
 母と父が寄り添って笑っている。その母の頭に乗っているのが、まさしくこのリボンだった。
 母の宝物だったのかな。
 だって、この写真の母は特別幸せそうに見えた。
 その、母のリボンの髪留めを、自分の頭につけてみる。
 笑った顔は、母にそっくりだった。


『時を結ぶリボン』

12/19/2025, 10:39:53 PM

「今年はサンタさんに何をお願いするの?」
 今年引っ越してきたばかりで、まだ周りに慣れていない。友達とも離れ、さぞかし寂しい思いをしているだろう。
 せめてクリスマスだけでも盛大に。プレゼントも豪華にして楽しんでもらおうと、お母さんが女の子に尋ねた。
 女の子はその言葉にすぐさま目を輝かせた。
「キラキラしたもの!」
 キラキラしたもの? 宝石とかそういう?
 さすがにそれはまだ早い。おもちゃの宝石でいいだろうか。
 そうしてプレゼントを決め、クリスマス当日がやって来た。
 天気は悪く、厚い雲が空を覆っていた。
「今日は冷えるわねぇ」
 予約していたケーキを受け取りに、お母さんは女の子と共に道を歩いていた。
 突然、女の子が声を上げた。
「キラキラ!」
「え?」
 女の子がお母さんに向かって手を差し出す。
 手袋をはめたその手の平の上に、小さな雪の結晶が乗っていた。
「……雪?」
 見上げると、雪が舞い出していた。
 今まで南の方に住んでいた女の子が雪を見るのは、これが初めてだった。
「キラキラ! わぁー」
「キラキラって……」
「サンタさん、ありがとう!」 
 女の子が喜ぶ顔を見て、お母さんもサンタクロースに感謝した。


『手のひらの贈り物』

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