"さよならを言う前に"
窓ガラスから見える夕日。
今日も1日が終わった。
彼は、授業が終わったことも気づかず机に伏せて寝ている。
そんな彼の寝顔を見て、今日も私の心は満たされる。
「また明日」
まだ寝ている彼に向かって挨拶をし、私は教室を出て行く。
"空模様"
今日は雲ひとつない青空。
私たちは付き合って4年目を迎えた。
彼の迎えの車に乗り、私たちはある場所に向かった。
その場所は、旅館。
お互いに温泉に入り、浴衣に着替えて部屋に戻る。
ご飯を食べて、たくさんの思い出を話した。
すると突然、彼の表情が変わった。
私は何かしてしまったのか、と不安になった。
「俺と結婚してください。」
彼が結婚指輪を私に差し出し、プロポーズをしてくれた。
「よろしくお願いします。」
私は、嬉しくて涙が込み上げてきた。
その時の空は、雲ひとつない星空だった。
"夜の海"
私たちは恋に堕ちた。
とても幸せな毎日だった。
あの事件が起きるまでは__。
私たちは海に遊びに来ていた。
互いに海水を掛け合ったり、写真を撮り合ったり。
そんな時間が、私たちにとっては特別だった。
彼の運転で、家に帰ろうとしたその時。
こどもが海で溺れているのが見えた。
気が付くと彼はこどもの元へ走っていた。
こどもは、無事だった。
でも、彼は私の元に帰って来なかった。
海の波に呑まれてしまったのだ。
彼は、帰らぬ人となった。
それから今日でちょうど1年。
私は、彼と最後に過ごした海に来ていた。
彼とのことを思い出し、泣いた。
人の目なんて気にならなかった。
やっと、泣くことが出来た。
そして、今日。
私は彼の元へ向かって夜の海に消えていくんだ_。
"最初から決まってた"
高校で初めて出会った男の子。
私は、彼の笑顔に心を奪われた。
彼に気持ちを伝えることを決め、告白をした。
私の気持ちが、彼に届くことはなかった。
それから月日は流れ、
私たちは誰よりも強い絆で結ばれた、友だちになった。
そう思っていたのに。
突然、彼が言ったのだ。
「〇〇、付き合ってほしい」
私は、何が起こったのか分からなかった。
でも、気づいたときには言っていたのだ。
「よろしくお願いします」
そして、始まった私たちの恋人生活。
これから幸せな毎日が待っていると思っていた。
しかし、幸せな恋人生活は長くは続かなかった。
彼から別れを告げられたのだ。
結局、私たちは友だち止まりだったということなのだろう。
友だちでいる方がお互いに楽だった。
そう気づいてしまったら、恋人でいても辛くなるだけ。
きっと、私と君との関係は最初から決まっていたんだ__。
"目が覚めるまでに"
放課後、教室に行くと誰かが寝ていた。
そのひとは、私の好きなひとだった。
いつの間にか私は、彼の元へと歩き出していた。
そして、彼の目が覚める前に
彼の頬にそっとキスをした。