【クリスタル】
「クリスタルだから壊したんだよ」
そいつは言った。
彼女はぐったりとして動かない。
「所詮すべては偽物さ」
そいつは笑った。
私は彼女を抱えて、その場から離れた。
機械人形にも心が必要だとお父様は言った。
研究を重ね、さまざまなもので心を作った。
鉄、鉛、金、ガラス。
笑って泣いて、微笑んで。
一番人間らしい彼女の心はクリスタルだった。
それなのに、それなのに。
彼女の心は壊れてしまった。
お父様亡き今。
彼女の心は治るだろうか。
私の心で代用できたら良かったのに。
【カーテン】
カーテンを開けてはいけないとその人は言った。
死にたくなるだろうからって。
なにそれって、思った。
勝手に決めつけるなよって、思った。
だからその人がいない隙にカーテンを開けた。
窓の外の景色が見えた。
見たことのない生物がこちらに向かってくる。
窓を割ろうと強く叩いてくる。
私はカーテンを閉めて。
死にたくなった。
【小さな愛】
小さな愛、みぃつけた。
恋人繋ぎのその先に。
小さな愛、みぃつけた。
親が子を抱くその先に。
小さな愛をみぃつけて。
そのまま、ごくんと食べちゃえば。
みんな不幸になっていく。
けれども僕はそこが好き。
【子供の頃の夢】
子供の頃の夢?
うーん、小説家かな。
あの頃は本ばかり読んでいたからね。
とはいえ、入賞すらできず。
すっかり大人になっちゃって。
……諦めるのは早いって?
人生百年時代だもんね。
でも期限を決めないと。
夢ばかり追ってられないから。
半年の間に成果が出なかったら。
もう書かないよ。
【どこにも行かないで】
お願い。
もう、どこにも行かないで。
あたしのそばにずっといて。
外は危険ばかりだけど。
ここにいれば安全だから。
なにも心配いらないよ。
だから。
「駄目だよ」
君は言う。
あたしと目が合う。
「幽霊は成仏しなきゃ」
君は言う。
だんだんと透けていく。
お願い。
お願いだから。
やっと君に会えたのに。
話だってできたのに。
幽霊だっていいじゃん。
あたしを置いていかないで。