【君と歩いた道】

いつから僕らは違っていたのか。
昨日から、結婚前から、それとも最初から。
振り返れば君と歩いた道がある、と信じていた。
それなのに。
お互いに自分のことしか見てなくて。
気付けばすれ違ってばかりで。
「そんな言葉で浮気が許されるとでも？」
……すみません。

【夢見る少女のように】

画面の中の彼女は一生懸命だった。
笑って、悔やんで、泣いて。
まるで夢見る少女のように。
ふと横を見ると彼女がいた。
画面の中とは別人で。
空っぽの客席を睨んでいた。

【さあ行こう】

「さあ行こう」
「どこに？」
「二人で生きられる場所に」
「そんなもの、あるのかしら」
「あるよ！ この世界は広いんだ」
「世界は広い、ね」
たとえ世界が広くたって無理じゃないかしら。
人魚と人間が一緒に生きる、なんて。

【水たまりに映る空】

「綺麗だね」
「なにが？」
「水たまりに映る空」
「綺麗か？ ってか、これは水たまりじゃねーだろ」
氷河が解けて大地は水に沈んでいく。
これを綺麗だなんて言えるのは。
「お前が人魚だからだな」

【恋か、愛か、それとも】

ずっと前から好きだった。
幼稚園でも小学校でも中学校でも。
同じ高校を選んだのは君が好きだから。
私の学力ではギリギリだったけど、なんとか入れた。
おかげで追試常連ではあるけど。
今日こそは君に伝えようと決めていた。
恋か、愛か、それとも。
「え、お前のことは友達としか……」
友情か。