5/26/2025, 11:29:25 AM
【君の名前を呼んだ日】
その日、息子は猫を拾ってきた。
尻尾まで真っ黒で、去年死んだ猫に似ていた。
元の場所に戻してきなさい、とは言えず。
私は世話をすることを条件に飼うことを許した。
息子は猫の名前をクロロにした。
前の猫がクロだったから。
息子が君の名前を呼んだ日。
君は猫になった。
5/24/2025, 12:08:56 PM
【歌】
ラジオから流れた聞き覚えのある歌。
それは今まで隣にいたはずの君の音。
あまりに離れてしまった君との距離。
もう二度と関わることがない明日に。
君を想って僕は歌う。
5/23/2025, 11:26:24 AM
【そっと包み込んで】
ゆっくり、優しく、丁寧に。
そして、そっと包み込んで。
大丈夫、まだバレやしない。
そのまま川に流しましょう。
どんぶらこ、どんぶらこ。
角のない鬼は、桃に包んで。
どんぶらこ、どんぶらこ。
5/20/2025, 9:14:32 PM
【空に溶ける】
今日の空は透明だった。
きっと海を吸い込みすぎたのだろう。
ときおり魚の姿が見えた。
時間が経てば空に溶ける。
無かったことになってしまう。
地上と同じように。
今日も空に吸い込まれないよう。
私たちは祈ってる。
5/19/2025, 8:26:00 PM
【どうしても…】
「どうしても…愛してくれないんだね」
あなたは言って、私は頷いた。
「愛がなくても結婚はできるわ」
「そういうことじゃ」
「あなたは夢を見すぎよ」
「でも」
「結婚するしか道は無いもの」
種族の未来を繋ぐには。
愛なんていらない。
だって、あなたを喰ってしまうから。