【どうしても…】


「どうしても…愛してくれないんだね」
あなたは言って、私は頷いた。
「愛がなくても結婚はできるわ」
「そういうことじゃ」
「あなたは夢を見すぎよ」
「でも」
「結婚するしか道は無いもの」
種族の未来を繋ぐには。
愛なんていらない。
だって、あなたを喰ってしまうから。

【まって】

悪気があったわけではないんです。
ただいろいろと相まって落ちてしまったというか。
す、すぐに拾いにいけば間に合いますって。
今更、人間が知恵の実を食べたところで。
人類の滅亡は避けられませんから。

【手放す勇気】

「手を離せ」
彼は言う。
けれど私は離さない。
「手放す勇気だって必要だ」
彼は言う。
けれど私は離さない。
「離してくれ！」
彼は言う。
けれど私は離さない。
あなたを死なせてたまるものか。
さっさと自首して私の無実を証明しろ。

【光輝け、暗闇で】

空を見上げる。
太陽は昇らない。
朝も昼も、昨日もその前も。
世界から太陽が消えてしまった。
この先に待っているのは終焉で。
人類に先はないけれど。
どうか、長生きできますように。
私は生まれたばかりの息子を抱く。
光輝け、暗闇で。
一縷の望みは託したよ。

【酸素】

燃えろ。
燃えろ。
燃えてしまえ。
こんなものがあるから争いは終わらない。
こんなものがあるから人間は傷付け合う。
こんなものがなければ。
「火を消せ」
「駄目だ！ 間に合わない」
宇宙船の一室は炎の海に包まれる。
そこは酸素を作り出す部屋だった。
この船は助からない。
宇宙船を管理する機械人形の彼女以外は。