【光輝け、暗闇で】

空を見上げる。
太陽は昇らない。
朝も昼も、昨日もその前も。
世界から太陽が消えてしまった。
この先に待っているのは終焉で。
人類に先はないけれど。
どうか、長生きできますように。
私は生まれたばかりの息子を抱く。
光輝け、暗闇で。
一縷の望みは託したよ。

【酸素】

燃えろ。
燃えろ。
燃えてしまえ。
こんなものがあるから争いは終わらない。
こんなものがあるから人間は傷付け合う。
こんなものがなければ。
「火を消せ」
「駄目だ！ 間に合わない」
宇宙船の一室は炎の海に包まれる。
そこは酸素を作り出す部屋だった。
この船は助からない。
宇宙船を管理する機械人形の彼女以外は。

【記憶の海】

記憶の海で探してる。
幼いころに出会った君を。
記憶の海で探してる。
大人になっても変わらぬ君を。
記憶の海で探してる。
記憶の海で探してる。
「あたしはここにいるのにね」
君に似ても似つかぬ誰かが言う。

【ただ君だけ】

戦火に焼かれた街を歩く。
生き残りを消すために。
国王の命令は絶対で。
俺は従い動くだけ。
逆らうことなど。
許されなくて。
ただ君だけ。
幸せなら。
それで。
良い。
よ。

【未来への船】

目の前にあるのは二隻の船。
過去への船と未来への船。
どちらに乗るかはわかっていた。
息子のために帰らねばならなかった。
それなのに、俺は。
過去の船に君の姿を見かけて。
俺は思わず駆け寄って。
君の声も待たずに抱きしめて。
もう離れないと心に決めて。
「子どもを置いていくなんて最低な親ね」
過去への船は進んでいく。
未来を捨てて進んでいく。