な子

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5/5/2025, 8:37:20 PM

【手紙を開くと】

手紙を開くと、白檀の香りがした。
特徴的な丸文字が目に入る。
元カノから届いた最初で最後の手紙。
もう二度と会えない彼女からの遺言。
懐かしさと悲しさが混ざって心がざわめく。
いろいろと言いたいことはあった。
けど、それを伝えることはもうできなくて。
彼女と僕の居場所はもう交わることはなくて。
空を見て、目を細めて。
折った筆をまた握り直した。

4/13/2025, 9:16:03 PM

【ひとひら】

ひとひらの花弁が落ちる。
掴もうとするも、指の間からするりと逃げる。
桜の季節がやってきた。
新学期が始まる。
今年の新入生は最後まで学校にいてくれるかな。
それともみんな卒業しちゃうかな。
「みんないっしょがいいなぁ」
一番下の花ちゃんは言う。
そうだね、僕も一緒がいいな。
怪談になってくれるまで、ずっっっと一緒に。

4/4/2025, 9:17:58 PM



「桜って、クローンなんでしょ?」
「正確にはソメイヨシノが、ね」
「みんな同じってこと?」
「中身までは違うんじゃないかな」
「ふーん、そうなんだ。まるで」
「「「僕らみたいだね」」」

4/2/2025, 8:23:07 PM

空に向かって


夜空に向かって手を伸ばす。
けれど星には触れられない。
「おかあさんは星になった」
父はそう教えてくれたのに。
どうして届かないの?
どうして触れないの?
どうして会えないの?
ぼくは二階の窓から手を伸ばし。
そのまま地面へと落ちた。
幸い、下が地面だったため怪我はなかった。
ただ落下中にぼくは見た。
おかあさんの姿を。
今日もぼくは飛ぶ。
街の一番高いところから。
おかあさんに、会いたくて。

4/1/2025, 2:36:42 AM

またね!

「またね!」
遠ざかっていく君の背中。
僕は返事をしなかった。
だって、もう会えないから。
君は生きて、ないから。
「幸せなじじいになれよ」
君は言って、消えた。

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