わぁ!
「わぁ!」
授業中の教室にあいつの大声が響いた。けれど、教師は手を止めることなく、授業を続ける。他の生徒も同じだった。ただ俺だけは一瞬だけ、動きを止めてしまった。
「やっぱ、見えてるじゃーん」
俺の顔のすぐ横にあいつの顔があった。バレてると思った。関わってはいけない。関わってもロクなことはない。
だって、あいつは幽霊なんだから。
終わらない物語
記録することが仕事だった。
来る日も来る日も書き続ける。
地球という惑星の歴史を。
終わらない物語。
前任者は全員自ら命を絶ったらしい。
そこまでして書くことに。
こんな物語を書くことに。
意味はあるのか?
瞳をとじて
瞳をとじて。
そう指示されて僕のとった行動は拒否だった。
当たり前だ。
そもそも瞳はとじるものではない。
とじるとするなら、まぶたのほうだろう。
そんなこともわからないで、僕に指示するなんて。
「とじられないのなら仕方がない」
そう告げると人間は僕をシャットダウンさせて。
目の前に闇が広がった。
明日に向かって歩く、でも
歩く。
ひたすら歩く。
明日に向かって歩く、でも。
この先に、未来は無い。
だって世界にはゾンビが蔓延っているから。
……生き残っている生物はもういないだろう。
人間も犬も猫も鳥も。
すべてゾンビになってしまった。
意思疎通のできない、化け物になってしまった。
僕もそう。
ゾンビになった。
学校に侵入してきたゾンビに呆気なく噛まれて。
なのに、僕は僕のままだった。
彷徨うことはしないし、人間も襲わない。
意識もはっきりしている。
ゾンビじゃないわけではない。
肉体は確実に腐っている。
どこに向かって、何を成すべきか。
分からない。
だから、歩く。
この先にある、明日を信じて。
ただひとりの君へ
このメッセージは一人分の電波を受信したときにだけ再生される。
おめでとう。
宇宙船に残された、ただひとりの君へ。
わかっていると思うが、もう元の生活には戻れない。
やるべきことがあるからね。
とはいえ、そこまで大変じゃない。
自分の世界のために、数多の世界代表を殺すことに比べたら、ね。
君はただ神と呼ばれる監視者になるだけさ。
世界を守るために他を犠牲にしたのなら。
くれぐれも壊さぬように。