鶴づれ

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6/24/2023, 12:08:53 PM

一年後


「ありがとうございました」
 行きつけの本屋の店員が笑顔で私を送り出す。軽く会釈を返して、店を出た。冷たくなった風が頬を撫でる。
 私の手には、買ったばかりの予定帳。散々迷ったのに、結局、去年と同じデザインのものを買ってしまった。手帳から私を変えていこうと思ったけれど、来年に持ち越しになりそうだ。
 とはいってもせっかく同じデザインなので、家に帰って、今まで使っていた手帳と見比べてみる。鞄から今までの手帳を取り出して、買ってきたものと一緒に机に並べた。
 当たり前だけど、一年間使っていた手帳の方が汚れていて、傷も多い。綺麗に使っていたつもりだったのに、いつの間に古くなったのか。新品だった頃は、今隣にいる手帳と全く同じ、完璧に整った姿だったというのに。
 私はまた、一年かけてこの新品の手帳を古くしていくのだろう。
 そうしたら、今新品の手帳は一年後には隣にあるものと同じくらい汚れて、傷がつく。今でも汚れて、傷ついた手帳は、もう一年分古くなる。その隣にはきっと真新しい手帳が並んでいて、三つを見比べて驚く私がいる。
 また同じ手帳を買って本屋から出てくる私の姿が、なぜか頭に浮かんだ。