『親友』
『花鳥風月』
『わたしの名前』
あの子が描いてくれた習字
貰ってからずっと部屋の壁に飾ってある
あの子は「適当に書いた」と言うけれど
紙の上で強かに踊るあの子の字が
一人暮らしの静かな部屋を照らすので
-静寂に包まれた部屋-
夏の終わりの哀愁と
冬の始まりの静粛と
そんな季節に挟まれて
緑の葉がオレンジに変わり
生ぬるい風からスゥっと冷たい風になり
地面に散る夏の花びらが
俯き歩く私に
秋の訪れを唄うのだ
-秋-
高校生までずっと手書きの手帳とカレンダーを使っていた
毎年友達と新調しに行くのが楽しくて、ついでにペンやシールやマスキングテープも買って、年明けは良く文房具屋に何時間もいたものだ
テストの予定や、遊ぶ予定、何もしない日も何かを書いた
手帳とカレンダーが私の予定で埋まっていくのが好きだった
スマホで予定を管理するなんて、断固として拒否!
ありえない!
と思っていたけれど、大学に入ってまもなく、私の鞄の中から手帳が消え、部屋からカレンダーが消えた
その代わりに私の手元に残ったのは、この小さな現代文明だった
便利で、軽くて、なんでも管理できて、でもその代わりに、毎年の楽しみを1つ無くした
この間文房具屋コーナーに立ち寄った時、少しだけ、ほんの少しだけ、また制服を着てそこに何時間も居たくなった
-カレンダー-
毎日、今日が終わるのが惜しいなと思う
今この時が過去にすり替わる瞬間が惜しくて、なんとなくいつも未来を考える
そしてまだ起きてもいない事柄に対して不安になるのです
-喪失感-
丸くて大きな垂れ目はパパ譲り
大きな手のひらはママ譲り
昔話を人に話す癖はおばあちゃん譲り
引き出しに色んなものを詰めるのはおじいちゃん譲り
同じものを3つ買う癖は妹たちがいるから
なんでもおもしろ話に変えちゃうのはM子の影響
写真が好きなのはI子の一途な感受性に惹かれて
ギターを弾くのは先輩という師匠がいるから
沢山の要素に囲まれて、世界に1人だけの私がいる
-世界に一つだけ-