渓谷
俺の目をみろ
俺の眼球はお前のノロマな面を反射しているが
俺はお前なんかみちゃいない
お前は下降し続けている
彼らはお前の行く先を妨害するだろう
だがお前は下降し続けるしかない
彼らは浮き沈みしながらやってくる
谷を降りて、心をズタズタに引き裂きくるぞ
ハイエナみたいな獣の群れが見えるだろ?
俺の目をみろ
俺は夢なんかみちゃいない
お前は誇大妄想に取り憑かれた夢想家
俺の目をみろ、そして耳を澄ませ
踏み切りの音が聴こえてくるだろ?
奴らトロッコに乗って谷を降りて来たんだ
今にお前は奴らに呑み込まれる
ノロマなお前は俺の目をみているしかない
もちろん、俺はお前なんか助けたりしない
覚醒
君の言葉が僕を目覚めさせた
君の言葉が僕を奮い起たせたんだ
僕は勇気を得た
神様は知っているだろうか?
僕は地獄の日々の中に楽園を見つけたことを
そしてそこでノートの切れ端に愛の言葉を綴っていたことを
すべてが心地よい
すべてが新しく、爽やかだ
僕は風の中で、朝日を浴びて立っている
工事現場のそばのアパート
子供たちのはしゃぎ声が聞こえる校庭
水平線の彼方にぽつんと見える貨物船
すべてが心地よい
すべてが新しく、爽やかだ
僕は抗鬱薬が全身の血管に行き渡るのを感じる
頭の中のサウンドトラック
罰を受けなければならない。
僕は許されない罪を犯した。
その証拠がこの心のイタミ。
悲鳴を上げたってムダだ。
泣き叫んだって無意味だ。
誰も僕を慰めてなんかくれない。
この痛みは僕の罰。
この苦しみは僕なりの贖罪。
平穏が欲しい、どこまでもまっすぐな。
音楽が聴こえてくる。
懐かしい、母親の子宮の中にいたときに聴いた曲。
生まれる前のセカイにあった曲。
安らぎが欲しい。
お前は生きているだけで迷惑だからね
安らぎが欲しい。
お前なんか誰も必要としていないんだよ
安らぎを与えてくれ。
お前は出来損ないなんだ、もう終わりなんだ
ただただまっすぐな平穏と安らぎをください。
お前はもう戻ってこなくていい
音楽が鳴り止み、僕は眠りについた。
立方体
僕は見てはいけないものを見てしまった。
触れてはならないものを触れてしまった。
このセカイのあちこちに散りばめられた不安や憎悪といった混沌をかき集めた、小さな箱を。
そして僕は自己破壊を繰り返すことになった。
廊下の奥からは不気味な根が触手のように僕の首を絞めようと追いかけてくる。
日の光は届かない。
その小さな立方体こそ、僕だったのだ。
業火
薪を火にくべろ
薪を火にくべろ
奴らは笑っている
奴らは笑っている
君はパニックになるんだ
どうしようもないくらいにね
君は慌てふためくだろう
どうしようもないくらいにね
猜疑心が君を狂わせる
問題ないフリをしたって無駄なんだ
奴らは全部お見通しさ
猜疑心が君を追い詰める
目を閉じたって決して逃れられない
奴らは全部お見通しさ
ごうごうごうごうごうごうごうごう
蒼い炎が燃え続けている
その炎を絶やすな
その炎を絶やすな
この冷徹な世界を燃やし続けろ
君が最後を見届けるんだ