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5/25/2023, 6:43:02 PM

 ずっと、降り止まなければ良い。

 鼻を突く雨の匂い。吸う息は湿気で重苦しい。顔に髪が張り付く。服が水を吸って重くなる。肌を伝い、生ぬるくなった雨特有の不快感に全身を包まれる。
 それでも、足取りは決して重くない。
 世界を満たす雨音は心地良く、耳障りなものを消し去ってくれる。視界を暈かし、見たくないものを遮ってくれる。

 私の声は届かなくて良い。
 雨音が消し去ってくれるから。
 私の傷に誰も気付かなくて良い。
 血も涙も、雨が流し去ってくれるから。
 私の醜悪な心に、誰も気付かなければ良い。

 流し落とせない私の醜さを覆い隠す為に、ずっと雨が止まなければ良い。

5/21/2023, 2:29:11 AM

 例えば、優しい人になりたい?
 例えば、賢い人になりたい?
 例えば、見目麗しい人になりたい?
 
 例え話をを並べ立てて、コラージュした理想像はまるで別々のピースを無理矢理組み上げて作ったパズルのようだ。
 遠目で見れば、それは理想を描いた肖像画かも知れない。
 けれど近くで見てしまえば、それはひとつひとつは意味を持たない歪な何かなのかも知れない。

 どれだけ歪になっても、貴方の思う理想の僕でいたいと己を律する反面。
 貴方の本心に触れるのが怖くて、決して僕の理想の貴方を崩して欲しくないと願うのは、
 美しい肖像に囚われた僕の、自分勝手なエゴなのだろうか。

5/19/2023, 10:10:55 AM

 明日突然、君に会えなくなったとして。
 きっと僕は、大して変わることもなく生きていけるのだろう。
 世界はどれだけ広くても有限で、僕らはその中で一度でも縁が交わったのだから。
 何処かでまたいずれ交わることもあるかも知れないと、君が居なくても立てる僕は楽観するのだろう。

 明日突然、君が死んだとして。
 きっと僕は、大して変わることもなく生きていけるのだろう。

 君という大きな欠落を埋められないまま、君の居ない世界を生きていくのだろう。

5/18/2023, 4:33:34 PM

 甘酸っぱくて、胸を躍らせるような。誰もが当たり前のように思い描ける恋物語-ロマンス-なんて要らない。

 眩い輝きと仄暗い欲を内包して、己の醜さを曝け出してでも手に入れたいと思えるような激情に、
 愛って名前が付けば、それで。

5/17/2023, 12:43:59 PM

 月明かりは好きだ。
 月の輝く夜は、ほんの少し、カーテンを開けて眠りに就く。
 本当は夜空を眺めていたいけど、朝日は眩しいから。
 輝きに、目を灼かれてしまうから。

 月も無く、星も瞬かない夜は、部屋の隅の常夜灯を点けて眠りに就く。
 夜目の効かない臆病な自分が、暗闇に怯えずに済むように。

 目が覚めた時、光が失われていないように。

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