幼稚園生の頃、同い年なのに君の方が身長高くて、
いつも背中押してくれてたよね。
どんどん大きく揺れて高さを増していって
最初は怖かったけどだんだん楽しくなってきて
ブランコが大好きになったよ。
小学生の頃、放課後ランドセルを投げ飛ばして
君と二人でブランコを漕いだよね。
僕の背丈も増してたまに二人で立ち漕ぎなんかして。
6年生になるまでほぼ毎日一緒にブランコを漕いだよね。
中学生の頃、PTAの主張でブランコがどんどん無くなってったよね。いつも遊んでた公園からも、学校のブランコもほぼ全部が撤回されていったのを覚えてるよ。
1年生の頃はショックだったけど、時間が経つにつれ
僕達は別々の道で幸せになろうとして
放課後一緒にいることもなくなったよね。
ほんとはもっと遊びたかったな。
高校生の今、あの公園は取り壊されて今は住宅地になったよ。そのことを同級生と話したけど、あの公園のことは知らないって言っててびっくりしちゃった。同級生であの公園知ってる人は僕らくらいらしいよ。なんだか秘密の場所みたいでうきうきするな。
あの公園で遊んだ記憶は今は僕しか持ってないんだな。
なんだか少し寂しいや。
君ともっと話していればよかった。
中学を卒業した春休み。君は死んだ。
君のお母さんに聞いたけど自殺だったんだね。
ごめんね、気づけなくて。
今も時々君を思い出して、
あの公園があった場所に行くんだ。
住宅地だから長居はできないけれど、君との思い出はちゃんと僕が持ってるからね。絶対に忘れない。
もう今は話すことすらできないけれど、
いずれ僕がそっちに逝ったら思い出を語りたいな。
『ブランコ』
長い長い人生という旅を今終える。
今思えば、僕の人生には何もなかったな。
趣味も特技も青春も。全部空っぽ。
それなのに心はどす黒く壊れていた。
何もなかった、何もなかったから今終わらせる。
存在意義もここにいる理由もない。
今終わらせなかったらきっと後悔する。
だから、僕は今人生という旅を終わらせる。
僕の人生の果てに残ったのは
空っぽなまま満たされない心だったよ。
『旅路の果てに』
「前から好きでした」
「大好きです、付き合ってください」
何回も告白の文章を書き直す。
私はあなたのLINEの画面をみながら何度も何度も。
「あなたのことが大好きです。」
この文章に私の全ての想いをこめていざ送信ボタンに力を込める。 だめだ、送れない。
ずっと好きで大好きで、付き合いたいなって思ってた。
でも仲良くなる度に、あなたは友達として好きなのが伝わってきて申し訳なくなっちゃった。だから最後に告白して終わらせようって思った。でも話せなくなっちゃうのが辛くて、全然送信できない。
もう言っちゃいたいのに、言えない。
『あなたに伝えたい』
私は夢を作り夢を魅せるお仕事をしている。
そう、アイドルだ。
今日もステージの上で笑顔を振りまく。
小さい頃から自分の声や容姿には自信があった。
世界で一番かわいいって思ってたし、テレビに出てるアイドルはぶさいくだと思った。
今は少し成長して周りの子もかわいいって思えるようになってきたけど、やっぱり私が一番かわいいって思う。
親も親戚もみーんな私のことかわいいって言ってくれるし、今まで1度も容姿について悪く言われたことはない。
だからそんなかわいい私はもっとみんなに褒められたい、かわいいって言ってもらいたいって思うようになってアイドルになった。
私はアイドルとしてステージに立ち、ファンのみんなに笑顔を振りまいている。かわいい私が大好きだし、アイドルの自分も大好きだ。
私が常に一番かわいくて最強なアイドルなの。
『I LOVE...』
昔はとても嬉しかった「街へ行こう」。
今は少し怖くなった。
人の声も足音も雑踏も喧騒も。
いつしか全部全部が嫌になった。
みんなお洒落で希望に満ち溢れていて、
活気に溢れていて。そんな中に僕は似合わなかった。
全然嬉しくないのに嬉しいふりをしなくちゃいけない。
気持ち悪さで吐きそうなのに楽しいふりをする。
ほんとにだめだ。街は僕をかき消してしまう。
『街へ』