「夢が醒める前に、答えが見つかるといいね」
貴方はそういった。
私は夢の中で、まだ、答えを探してる。
この現実という夢は、醒めそうにない。
廃課金には遠く及ばない微課金だけど、推しのガチャ用に無課金石と課金石をしこたま溜め込んでいざ決戦!
十連で3回までは軽く回し、さあ勝負の四十連五十連。胸の高鳴りで手に汗が滲んでくる。
推しにかすりもしない結果に、さあそろそろ出てほしい六十連七十連。
と、確変演出でとうとう推しが出た!
嬉しさよりも一気にどっと疲れが来た心臓に、思わず安堵の息。
それからジワジワと喜びを噛みしめた。推しの新作カード、ニヤニヤが止まらない。これだけで石を溜め込んだ甲斐があったというもの。
今回は天井まで行かずに済んだ。
でもいつもは天井かセレクトチケットを買って推しの新作を迎え入れている。
推しがガチャで出る度こんなことを繰り返している私は、立派な推しガチャ依存症かもしれない。
平和な時の不条理には、お金が絡んでいる。
戦乱の時の不条理には、命が絡んでいる。
不条理。
私達は生まれたときから不条理の中で生きている。生まれた環境。親の年収。自分の才能。
それぞれの不条理を抱えてごちゃまぜなこの世界で、私達は生きていく。
泣かないよ、とは言えない。
耐えても耐えても涙が盛り上がってくるから。溢れた涙は、目を動かさなくても簡単に頬に滑り落ちていってしまう。
涙を堪えるのは、苦手だ。
怖がりな君は夜道を早足で歩く。
その後を、俺はついていく。ストーカー? いやいや専用警備員と言ってほしい。
俺の靴音が彼女を怖がらせているとしても、俺は彼女を自宅まで送り届けているだけ。怖いことなど何もない。
俺は、彼女の怒り気味の肩が小刻みに震える様を愉しんでいるだけだ。
好きだから、後をつけたくなるのは当然の事。
彼女とは、まだ話した事もないけれど。
いつか、俺の気持ちが彼女に通じるといい。
そう思いつつ、今日も俺は彼女の後をついていく。