「寝てた…」
居間のコタツで気づいたときにはつけっぱなしだったTVが勝手に消えていた。
天候と立地の関係で、家からは初日の出が臨めない事を知っている私は、TVで初日の出を見る為徹夜をするつもりだったが、お酒を呑み過ぎたようだ。
急いで窓の外を見ると幸いにも辺りはまだ暗く、TVをつけ直すとよくわからない旅番組がやっていた。
時計を確認すれば朝の5時半。
初日の出には間に合った。
私は、ポットからカップに白湯を注いで一口すする。
今年は中継でダイヤモンド富士が見られるか、少しわくわくしながらTVを見つつその時を待つ。
大晦日から初日の出までの時間は、一年で一番自由な時間だと思う。
今年の抱負は、旧作を終わらせること。
特に年季ものの未完成品を終わらせないと次に進めないと強く感じている。
でも完成の絵が思い浮かばない。
だから今年一年かけて、終わりの光景を描きに行くのだ。
卯年に掛けてピョンピョンと話が纏まるといいなあ。
新年。
今年がまた始まって昨日は去年になった。
大晦日を過ぎれば元日がやってくる。
当たり前のことだけど、たった一日変わるだけで年が隔てられる、それがちょっと不思議で厳かな気持ちになる。
脈々とした伝統の息遣いが感じられて、私は好きだ。
「良いお年を」
年末の挨拶は11月にはまだ早い。
私にはこの言葉を言えなかった場所がある。12月はとうとう行けずじまいだった場所。
最近心に沁みた言葉がある。
"居場所は選べる"
今年一年コロナの合間を縫って通っていた――――11月に行ったきりの場所は、思えば居場所のない場所だったなあとしみじみ感じた。
社会復帰のために無理矢理しがみついていた場所だったけど、今は、そこでなくてもいいのではないかと思いはじめている。
来年はもう行かないかもなあ。
他に当てがあるわけじゃないけど。
そんなことを考えながらTVを見て栗を食べる。
大晦日もあと僅か。
皆様、良いお年を。
社会人だった時は四半期毎に締めがあっていつも数字に追われる日々だった。
でも今年は違った。
精神の不調ってやつで社会人はお休みした。
数字から――――鬱陶しい人間関係から開放されて充実した一年になるかと思ったのに、まだ精神の不調は治らない。
うまく行かないなあと思いながら。
それでも今年一年の良かったこと探ししてみる年の瀬。
とりあえず社会人だった頃はぐちゃぐちゃだった部屋が、綺麗にできた事だけは良かったかな。