教室のカレンダーは、いつの間にか9月になっていた。
気の早い誰かの仕業かな
もうすぐ夏休み 高校二年生の夏がはじまる。
私は密かに決心した。次、担任の月田先生と二人きりになった時、絶対に告白する。
月田先生は数学が専門の36歳独身、おじさんだ。かっこいいかと言われるとちょっと違う。身長だってあまり高くない。でも、なんか気になって仕方がない。
「あっ雨。」
遠くで唸る様な雷が鳴っている。昇降口で何人かの生徒が通り雨が過ぎるのを待っていたその時、月田先生がやって来て教室で待機するようにと私たちに伝えた。
私のクラスは私だけだったので、教室に先生と二人きりになった。
「藤谷、雷雨だからすぐにあがるだろうけど家の人に連絡してみたらどうだ。」
「はい…あの…先生、わたし…」
「どうした。」
「月田先生の事が好きです。付き合ってください。」
我ながら唐突すぎたかなと思った、でも今しかない。
「藤谷、先生もお前のことは好きだ。でもそれは生徒として大切に思っていると言うことだ。」
「じゃあ、どうしたら先生の彼女になれますか。」
「藤谷の事は可愛い生徒の1人と思っている。だからそれは変わらないよ。」
雨の音がより一層大きくきこえた。
雨があがって、アスファルトがきらきらと太陽の光で反射しだす。空には薄いけれど虹が架かった。
私は月田先生の事が大好きだ。夏休みもきっと先生に会いに来てしまうと思う。
大人の事情で断られても、そんな事は想定内だから。
「先生、月田先生、夏祭り一緒に行きましょう。今年は花火も3万発上がるみたいですよ。行きましょう、先生。」
教室のカレンダーはいつの間にか9月になっていた。気の早い誰かの仕業なのだろう
これから暑い夏が、はじまる。
月田先生の髭の剃り跡が好き。声も好き。話す間も好き。大きな手も、あんまりはっきりしない顔も大好き。数学は苦手だけど好き。
私だけのものにしたら、それは贅沢?
「…以上になります、夏休みを有意義に過ごし、また9月にこの教室で会いましょう。」
私は早速、月田先生を花火に誘うため携帯のスケジュール表を開く。教室のカレンダーは、気の早い誰かの仕業で9月になってしまっているから。
【カレンダー】
わたしの好きな朝食の1つ。
熱々のご飯に生卵をかける。
卵かけ醬油をかける。
もうこれだけでわくわく踊りたくなる。
彩り大切、刻みネギをぱらぱらと。
最後は鰹節をかけて、いただきまーす。
【踊るように】
おばあちゃんがホームに入ることになった。
もうかれこれ10年くらい一人暮らしをしていたから、まだまだ元気って思っていたけれど。
そうじゃなかった。
わたしは何もできなくて、時々会いに行くくらいで。
それでも、おしゃべりなおばあちゃんはホームに入ることはちょっと楽しみにしているみたいで…
こんな日には小説を書こう
【やるせない気持ち】
水平線を初めて見たあの日、わたしは小学生でした。
空と海の境界線は、地球が本当に丸いということを教えてくれました。
水面はキラキラしていて、潮のにおいと少し湿った風が通り過ぎていきました。
あれから何度か海をみにいきました。
いい事、悪いこと、色んなことがあったけれど…
ああ、また海へいきたいなぁ
【海へ】
もしもわたしが鳥だったら
すきな時に歌い 疲れたら休み
自由で
何物にも縛られず 大空を舞い
すきな時に泣いて 笑って 生きていけたのかも
【鳥のように】