「深海の光」
#イルミネーション
深海のはるか奥底
酸素は残り僅か
ここまで降りてきた人間は未だに私だけだろう
「ここまで来たら、行ってやる」
深く深く下に潜り続けた
孤独の暗闇をただがむしゃらに進む
下に潜ると暗闇光が見えた
発光する深海のクラゲ
夜のイルミネーションみたいにキラキラ光っている
あまりの美しさに私は涙した
#心と心
私が透明人間になったのは今から5年前
体が見えなくなる前は普通に学校に行って生活していた
ただ頬に火傷の跡があり、ひどく私の顔は目立つのだ
人と顔を合わせるのが苦手だった
とにかく目立つことが嫌いだった
両親喧嘩が多く2つ上の姉は私を嫌っていた
楽しみといえば、人のいない浜辺で歌を歌うくらいだ
ある日浜辺で帽子を海に流されたことがあった
帽子を拾おうと海に入るとあの生き物にあった
透明な大きなクジラ
渦潮のような大きな口に飲まれ私は溺れた
目が覚め、私は浜辺でに打ち上げられ、その時私の姿は透明になっていた
私がいなくなっても誰かが探しに来ることもなかった
もう誰かに気を使う必要もない
しばらく気楽に過ごしていたが、ふとした瞬間強烈な孤独におそわれ
私は歌った
私は歌うこと、不思議となにか心と心が通じる気がした
浜辺で今日も私は歌を歌う
#何でもないフリ
「路上応援団長」
帰りの駅を降りて、
いつもの大声が聞こえる
路上応援団の女の子が一人応援をしているのだ
一昔前の格好の学ランにハチマキ
ポニーテールの眉毛がキリッとした女
頼まれた相手に無償で人を応援している
俺が帰る時サラリーマンが応援を頼んでいた
エネルギッシュで前向きな彼女は応援をもらった人は不思議と元気になれるらしく一定数ファンがいるほどだ
人前でよくあんな目立つことができるもんだな
応援団長の女と話す機会があった
「キミもエールが欲しいのか!」「いや、そういうわけじゃないです聞きたいことがあって」「なんだい」「どうしてこの活動やってるんですか」「応援が必要だからだよ」
「生きていくには誰でも大変だ、日常生活で誰かが応援してくれると思うとなんだか頑張れると思うんだ」「そういうもんですか」「そういうものだ!」
何でもないフリをしていたが応援団長の女の真っすぐな姿勢に内心動揺していた。
「仲間」
僕は一人でも大丈夫
ホントに一人なんてことはないんだよ
周りに気を使うのが嫌なんだ
子供みたいなこと言わないでよ
やることだけでいい一緒の方向を向きたきないから
一人でできないこともみんなならなんとかなるんだよ
仲間意識なんか持ちたくない、構わないでくれ
嘘ばっかりだね
「手を繋いで」
大人になった社交界
汗ばんだ手
緊張が隠せない
みんなは踊りだす
一人の私を見つける
「手を繋いで」
汗ばんだ手をあの人は気にもとめなかった
二人は踊り続けた。