彼女と知り合ったばかりの時は、いや今でもそうなんだけれど、大体変なことに巻き込まれて怪我をしている印象で。
幼さと無垢さを覚えたから、俺が守らなきゃって思ったんだ。
それなのに彼女は強くなっていく。
俺が守るんじゃなくて、俺の隣にいられる自分になろうとしてくれる。
俺の知らない君のこと、もっともっと知りたいんだ。
ねえ、教えてよ。
他にもどんな君がいるの?
おわり
六六五、もっと知りたい
仕事も平穏な日常のひとつ。ではあるけど、救急隊の仕事をしていると、それを日常とは思いたくはなかった。
似たようなケースがあっても同じケースなんてない。
だから家に帰ると安心する。
恋人と過ごす時間が穏やかで、心地よくて、愛おしんだ。
「お疲れ様です」
柔らかく微笑んでくれた彼女が温かいココアを差し出してくれる。
俺はそれを受け取って、ゆっくりと口つけた。
甘さが身体に染み込んで、疲れを癒してくれる。
「はぁ〜オイシイ〜」
「うふふ、良かったです」
そんなふうに答えてくれる。
こんな穏やかな時間が何よりも大切な日常だと思った。
おわり
六六四、平穏な日常
救急隊員として、人を助ける。
俺はその訓練をずっとしてきた。
最優先にするのは自分の命。
それは二次被害を出さないためのもので、自分が要救助者を助けるためにこそ大切なことだった。
俺は手を伸ばす。
どんな状況でも俺の手が届く限り伸ばしてやる。
おわり
六六三、愛と平和
私の過去は記憶に留めて置きたくない。
そう思って私は過去を捨て去った。
そうして私はココに居る。
高いビル群を遠目にしながら空港に降り立つ。
誰も私を知らないこの場所で、新しい自分になる。
一歩進めなかった私から、勇気を振り絞って前に進むと決めたんだ。
知らない都市の空気を吸ってから足を踏み出した。
おわり
六六二、過ぎ去った日々
人にプレゼントを贈る時は、高いものを贈るより手作りのものを作って渡したい。
ものを作るのが得意なのか聞かれると、どちらかと言えば不器用な方で。
本音を言えばお金でどうにかなるなら、サッと買いたい気持ちはある。
でも、そうじゃないよね。
私はチョコレートアイスクリームを作る。
アイスなんて買えばいい。
高いアイスなんていくらでもある。
でも、私は作りたい。
お世話になった人にお礼をしたい。
〝ありがとう〟を沢山詰め込みたい。
生物が迷惑なら捨ててもいい。
そう思って、自分にできる最大の気持ちを込めて、手間をかけていく。
緩かったものが少しずつ力を込めないと混ぜられなくなっていく。
この都市で、本気で悩んだ時に背中を押してくれた大好きな人たちに感謝を込めて。
こういうものを、気になる彼にもいつか渡せたらいいな。
チョコアイスをお世話になった人たちに渡したら、泣きそうなほど喜んでくれた。
たったひとりでこの都市に来た私を、家族のように大切にしてくれる人たち。
ああ、渡せて良かった。
おわり
六六一、お金より大事なもの