「うわ」
仕事の合間に窓を見ると外は真っ白でびっくりした。
道全てが雪で埋もれている訳じゃないけれど、これは帰るの大変そうだな。
いつもと変わらない喧騒の中なのに、雪によって密閉された感じと響かない空気がそこにあった。
仕事に集中して全然気が付かなかったけれど、確かに静けさを覚える。
そうして思い出す。
雪が積もったということは滑って怪我する人が増えると言うことだ。
この静けさはきっとすぐ終わる。
俺は事務仕事を切り上げて白衣をまとった。
おわり
五八〇、雪の静寂
きゅっ。
お腹あたりを軽く締められて目が覚めた。
背中に温もりを感じて身体を起こさないように振り返る。
甘えるのが得意じゃない恋人が俺の身体に抱きついている。
顔が見える訳じゃないけれど、起きているとは思えなくて俺は彼女のなすがままに抱き枕になった。
どんな夢を見ているのかな。
本当は正面から抱きしめてあげたいけれど、身体を動かしたら起こしちゃうかもしれない。
俺は彼女の手に自分の手を重ねる。
俺はずっと君のそばにいるからね。
おわり
五七九、君が見た夢
小さく唄っていたら、隣から恋人がジッと見つめてきた。
私は口を止めて首を傾げながら彼を見つめる。
その視線に熱を感じた。
「どうしました?」
「んー」
小さく呟きながら彼が私の肩に頭を乗せてくれる。
「置いてかないでね」
「ふえ!?」
どこか強ばった声にびっくりする。
どこか体温が冷たくなっている気がして、思わず彼を抱きしめた。
「大丈夫です」
少しだけ力を入れる。
「私はどこにも行きませんよ。明日も、これからもずっとそばにいます」
おわり
五七八、明日への光
「きーらーきーらーひーかーるー」
夜空の星を見上げながら、恋人は小さい声で歌う。
俺に目もくれずに、その目に星を写して歌い続ける。
そんな彼女は、どこか楽しそう。
なにより神秘的だった。
冬の寒さで透きとおる空気は夜空の星をより輝かせて彼女の目を惹きつける。
俺は君に惹き付けられているというのに。
ねえ、こっちを見て。
俺だけの星の唄。
おわり
五七七、星になる
左手の薬指に輝くアイスブルーダイヤモンドの指輪。
約束の日が近づいていて、日々胸がドキドキする。
誰かを呼んで何かをする訳じゃなく。書類を提出した翌日に小さなチャペルで写真を撮らせてもらうだけ。
それだけでいいんだ。
約束の日までの今を大切に過ごしていこう。
遠い鐘の音が少しずつ近づいていく。
おわり
五七六、遠い鐘の音