ある日、いつもの様に仕事を終え帰路についていると、道端に何か生き物の様なものが落ちていた。
其れは掌ぐらいの大きさで人の形をしていた。
しかも背中には少し傷があるがキラキラと輝く羽がついていた。
「まるで妖精みたい…」
思わず口にからこぼれた言葉に反応する様に
むくりとその小さな生き物は起き上がりこちらを見つめた。
_おなか、すいた。
口は開いていないのに頭に声がに響く。
明らかにおかしいと分かっていても私は好奇心を抑えることが出来なかった。
「えーっと私の家、来る?」
その子を家に連れ帰り、ご飯を作って食べさせた。
食べた後にその子の話を聞いた。
名前はソラということ、妖精だということ、
本来は人間界に来ることは無いが迷い込んでしまったということ、帰るには少しの間かかるということ
昔から空想上の生物が大好きだった私はソラが元の世界に帰れるまで、家におくことにした。
ソラがいる生活はとても楽しかった。仕事で疲れて家に帰っても優しい声で癒してくれた。
けれど、ソラが来てから不思議なことが増えた。
家に帰る道で黒いモヤのようなものが見えたり、
悪夢をよく見るようになった。
悪夢は同じ黒いモヤと手のようなものがこちらに伸び、「おいでェ」「おいでェ」と言ってくるのだ。
そんなものに悩まされながらソラと暮らしているある日。
別れは突然にやってきた。
家に帰ってきた瞬間に扉から黒いモヤと手が伸びて部屋を飲み込んだ。私の体はそのモヤに飲み込まれそうになり必死にもがきソラの名を呼んだ。
「にげて、ソラ」
私の意識が暗転する瞬間、
ソラの体が光りモヤを消し去っていくのが見えた。
……何か音がする、
_おねーさん、ごめんね。こわいめあわせて
ソラの声が頭に響く
額に小さな小さな熱が灯った。
_ぼく、もうかえるよ。おうち
ソラを拾ってから約3週間ほどたっていた。
帰れるようになったのだろう。
ソラとはもう、きっと会えない。
_ありがとう、おねーさん。…またいつか
けれど記憶が薄れないように、覚えていられるように。
「またね、ソラ」
私はあの小さな命を忘れない。
ありがとう、ソラ。
_全ての空想に、現実に、命に最上級の感謝を