9/10/2025, 4:20:19 PM
岩田は、血で赤く滲んだ豆を隠すようにテーピングを巻いた。
「今日はこの辺でやめとこう」
高崎がティーバッティングで散らばった野球ボールを片付けながら言った。
「もうちょっとやろうよ。もう大会近いんだしさ」
この間、三年生は引退して、二年生と一年生の新チームになった。新しく生まれ変わって間もないが、一週間後に秋大会の予選が始まるのである。岩田はそれを心配していた。
「……付き合うけどよ、あまり無理し過ぎるなよ?」
「分かってる。怪我したら元も子もないからな。いつも付き合ってくれてありがとう」
高崎は鼻を鳴らし、不機嫌そうにカゴに座った。それでも丁寧にインコース、アウトコースにトスしてくれる。
緑色の人工芝をしっかり踏み込み、八割程の力で芯の真ん中でボールを捉える。ただひたすらにそれを繰り返す。
十分程経った頃、カゴのボールを全て打ち終え、二人は一緒にボールを片付けた。
今日の練習はここまで。
グラウンドを出て校門を潜る。自転車に跨り、二人は一緒に駅に向かった。
「来週さ、絶対勝とうな」
「岩田」
高崎はバッグの中から一本のペットボトルを放った。駅のホームの蛍光灯がペットボトルを青く照らした。
「俺たちなら絶対に勝てる。ここまで練習してきた自分たちを信じようぜ」
高崎は笑って言った。
「……あぁ、そうだな」
やっぱり心配だけれど、その笑顔につられて自信が湧いてくる。
「また明日」と言って、二人は別れた。
蓋を開け、温くなったソーダを口に含んだ。
もう少し、自分を信じてみようと思った。
お題:Red,Green,Blue