鏡に写る傷だらけの自分へ問う。
あなたは今、幸せですか。
眠りにつく前に あなたの顔を 声を思い出します。
私はあなたのそのすべてが好きでした。
たくさんの思い出をありがとう。
小学生の頃に一緒に歩いた遊歩道。そこであなたに頂いた真っ赤な夕陽を忘れることはないでしょう。
あなたと最後に交わした「また、遊びに来なさい。」
その言葉を信じて私は東京に向かいました。
眠りにつく前に あなたの顔を 声を思い出します。
夢の中で あなたと再会できる気がするから。
夏が過ぎ、キンモクセイの香りが街を包み込む素敵な日に、私は君と再会した。君は優しい声で「久しぶり。元気にしてた?」と話しかけてくれた。
数ヶ月ぶりに見た君の笑顔は輝いていて、とても美しかった。しかし、目線を少し下げると、君の左手の薬指がキラリと輝いているのが見えた。
私の人生という物語に、君の存在は欠かせなかった。君がいるから、辛いことも苦しいことも乗り越えられた。君が登場するだけで、私の物語は明るかった。
では、君の物語に私は登場するのだろうか。左手の薬指を見て、君が過ごしてきた「もう一つの物語」を聞くのが怖かった。
今、私と君だけしかいない時間と空間の中で、二人の間には全く別の物語が流れているような気がした。
私は高鳴る胸を抑え、声を震わせるながら「久しぶり。元気だよ。」と言ってその場を離れた。
夏が過ぎ、キンモクセイの香りが街を包み込む素敵な日に、私の片想いが終わった。
夜の散歩は至極である。
ポツポツと輝く星空、延々と続く道を照らす電灯、遠くから響く電車の音。静かになった街の中でたった一人取り残されたような気がして、しかし自分が全てを独り占めしているような気さえする。
よく都会の夜空は綺麗じゃない。と話す人もいるが、私はそう思わない。仕事に疲れたとき、何か大きな成果を残したとき、失恋したとき、心が満たされているとき、ふと上を向いてみよう。東京の星空も悪くない。東京にもあったんだ。
夜の散歩は至極である。
故郷に住んでいるあの人にも、都会の夜空を見せてあげたい。
ふと、暗がりの街の中でそう思った。