夏が過ぎ、キンモクセイの香りが街を包み込む素敵な日に、私は君と再会した。君は優しい声で「久しぶり。元気にしてた?」と話しかけてくれた。
数ヶ月ぶりに見た君の笑顔は輝いていて、とても美しかった。しかし、目線を少し下げると、君の左手の薬指がキラリと輝いているのが見えた。
私の人生という物語に、君の存在は欠かせなかった。君がいるから、辛いことも苦しいことも乗り越えられた。君が登場するだけで、私の物語は明るかった。
では、君の物語に私は登場するのだろうか。左手の薬指を見て、君が過ごしてきた「もう一つの物語」を聞くのが怖かった。
今、私と君だけしかいない時間と空間の中で、二人の間には全く別の物語が流れているような気がした。
私は高鳴る胸を抑え、声を震わせるながら「久しぶり。元気だよ。」と言ってその場を離れた。
夏が過ぎ、キンモクセイの香りが街を包み込む素敵な日に、私の片想いが終わった。
10/29/2024, 2:11:12 PM