ある名無し

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10/29/2024, 2:11:12 PM

 夏が過ぎ、キンモクセイの香りが街を包み込む素敵な日に、私は君と再会した。君は優しい声で「久しぶり。元気にしてた?」と話しかけてくれた。

 数ヶ月ぶりに見た君の笑顔は輝いていて、とても美しかった。しかし、目線を少し下げると、君の左手の薬指がキラリと輝いているのが見えた。

 私の人生という物語に、君の存在は欠かせなかった。君がいるから、辛いことも苦しいことも乗り越えられた。君が登場するだけで、私の物語は明るかった。

 では、君の物語に私は登場するのだろうか。左手の薬指を見て、君が過ごしてきた「もう一つの物語」を聞くのが怖かった。
 今、私と君だけしかいない時間と空間の中で、二人の間には全く別の物語が流れているような気がした。

 私は高鳴る胸を抑え、声を震わせるながら「久しぶり。元気だよ。」と言ってその場を離れた。

 夏が過ぎ、キンモクセイの香りが街を包み込む素敵な日に、私の片想いが終わった。

10/28/2024, 10:59:11 PM

夜の散歩は至極である。
ポツポツと輝く星空、延々と続く道を照らす電灯、遠くから響く電車の音。静かになった街の中でたった一人取り残されたような気がして、しかし自分が全てを独り占めしているような気さえする。 

よく都会の夜空は綺麗じゃない。と話す人もいるが、私はそう思わない。仕事に疲れたとき、何か大きな成果を残したとき、失恋したとき、心が満たされているとき、ふと上を向いてみよう。東京の星空も悪くない。東京にもあったんだ。 

夜の散歩は至極である。
故郷に住んでいるあの人にも、都会の夜空を見せてあげたい。
ふと、暗がりの街の中でそう思った。