お題:喪失感
泣きたかったわけじゃない。
留まってほしかったわけでもない。
引き止めてほしかったわけでもない。
連れてってほしかったわけでもない。
攫いたかったわけでもない。
花で埋めたかったわけじゃない。
洗い擦っても取れない掴み掴まれたその太さ。
服に縋って嗚咽する。
お前の匂いを知っていた。
お前の重さを知っていた。
お前の味を知っていた。
立ち尽くしては零れ落ちてく。
お題:世界に一つだけ
口にするだけは簡単。
一般人に証明は不可。
「必ず絶対」は困難。
世界規模の割に陳腐。
お題:胸の鼓動
「心臓をちょうだい」
「まだですか」
天井を見上げているのももう飽きた。
「まだですよ」
肉を切り開くこの瞬間に胸が高鳴る。
「あのう」
注意を引くため垂れている髪を引っ張ろうと手を伸ばす。なんだか少し動くのが怖い。
「ああ! 動かないでください」
「まだ終わりませんか」
「あなたの臓器までもを知らないと、気がすまないのです」
「……そうですか」
目を爛々と輝かせて言われてしまっては、引き下がる他ありません。
あなたのすべてが知りたいのです、あなたの胸の奥の鼓動までもを見なければ気がすまないのです、あなたのすべてが知りたいのですあなたのすべてが知りたいのです
「あなたのすべてが知りたい!」
ドクン、ドクン、揺れて見えるのは
あなたの心臓か、私の目眩か。
わたくし、内臓よりも手に触れたいです。
あなたの胸に耳を当てあなたの鼓動が聞きたいです。
「鼓動をちょうだい」
お題:踊るように
風の隙間 折れたカードを配るよ
宛がないこと 言われなくたって今更
踊るように 跳ねるように 震える文字で潰すよ
そうだねって涙して ライトを消して
寝たふりして 頭塞いで 知らぬ顔してカーテン下ろすの
きっと忘れる きっと嵩張る だから捨てちゃっといてね
お題:きらめき
きらめき、強風、落とし物。
ひらひら、列車、分らず屋。
ひらめき、手庇、知らぬ街。