お題:胸の鼓動
「心臓をちょうだい」
「まだですか」
天井を見上げているのももう飽きた。
「まだですよ」
肉を切り開くこの瞬間に胸が高鳴る。
「あのう」
注意を引くため垂れている髪を引っ張ろうと手を伸ばす。なんだか少し動くのが怖い。
「ああ! 動かないでください」
「まだ終わりませんか」
「あなたの臓器までもを知らないと、気がすまないのです」
「……そうですか」
目を爛々と輝かせて言われてしまっては、引き下がる他ありません。
あなたのすべてが知りたいのです、あなたの胸の奥の鼓動までもを見なければ気がすまないのです、あなたのすべてが知りたいのですあなたのすべてが知りたいのです
「あなたのすべてが知りたい!」
ドクン、ドクン、揺れて見えるのは
あなたの心臓か、私の目眩か。
わたくし、内臓よりも手に触れたいです。
あなたの胸に耳を当てあなたの鼓動が聞きたいです。
「鼓動をちょうだい」
お題:踊るように
風の隙間 折れたカードを配るよ
宛がないこと 言われなくたって今更
踊るように 跳ねるように 震える文字で潰すよ
そうだねって涙して ライトを消して
寝たふりして 頭塞いで 知らぬ顔してカーテン下ろすの
きっと忘れる きっと嵩張る だから捨てちゃっといてね
お題:きらめき
きらめき、強風、落とし物。
ひらひら、列車、分らず屋。
ひらめき、手庇、知らぬ街。
お題:言葉はいらない、ただ・・・
背中を擦って、相槌を打って、優しく包み込む。
言葉はいらない、ただ寄り添って……
なんていらないそれより早くぶん殴ってくれ!!!!
言葉はいらない暴力が欲しい
ただ暴力が欲しい
何より勝る恐怖心を植え付けてくれ。
それしか考えられないように
言葉はいらない、思考はいらない、ただ暴
ありがとう しあわせだ
お題:海へ
海へ行きたいのです。ベッドから引っ張り起こし、引きずって、連れて行ってください。身綺麗にしなくていいですから、部屋着のままでいいですから、体をどこにぶつけてもいいですから、足でも何でも抉れていいですから、どうか連れて行ってください。ひと目、海を見てみたいのです。風呂も入れず、食事も摂れず、排泄のため起き上がることも困難な、寝たきりの、中途半端、死ぬことすらままならない。わがままを言わせてください。身綺麗にしなくていいですから、食事も必要ありません、あなたの手を一度貸していただけませんか。そのまま海へ放ってもらって構いません。海へ行きたいのです。